罠



「抱いてくれ」と頼んだのはオイラ。
「後悔するなよ」と予防線を張ったのは旦那。


「後悔なんかするかよ、うん」ニヤリと不敵な笑みを浮かべたのはオイラ。
「だといいがな」無表情を貫いたのは旦那。



罠に嵌めたのはオイラの方だった。
けれど本当に罠に落ちたのはどちらか。





「はぁっ……あ…あぁっ」

「…デイダラ…」



異性との経験もまだだったオイラは旦那にされるがままだった。
男同士の愛情表現。こんな風にするのかと最初のうちはまだ余裕の残る頭で考えていた。


旦那は慣れた手つきでオイラのコートを脱がせると、赤く染まったオイラの頬に手を添え唇を重ねてきた。深く、深く、口づけられて息が出来なくなる。甘くて、熱くて、目眩がする。

オイラ自身を興奮させるのにはそれで十分だった。衣服の上からでも見てとれる、熱を帯び反りたったモノに旦那は厭らしく触れてくる。

「うっ…」

「何だ?止めるか?」

「まさか。オイラが頼んだんだ…うん」

下半身が露になる。覚悟を決めたはずだが、やっぱり躊躇ってしまう。そんな萎縮した気持ちに気づかれたくなくて、旦那のコートを掴み剥ぎ取った。月明かりに照らされた白い肌に鼓動が早まる。さらに存在を増したオイラのそれを見て旦那が薄く笑う。

「可愛いもんだな」

「…何とでも言ってくれよ」


きっとオイラの顔は今真っ赤になっている。追い詰められていくオイラを余所に、旦那の手が下へ下へと進んでいく。ああ、そんなところに触れないでくれ。


「…痛くないか」

「っだ、大丈夫っ…」


嘘だ。今までに味わったことのない痛みが身体を引き裂いた。涙が出る。痛い。恥ずかしい。痛い。

そんなオイラの心情を察したのか、旦那が抱きしめてくれた。―ああ、大丈夫だ。どんな痛みがオイラを貫こうと。この人とひとつになれるなら。この人が身体だけでもオイラのものになるのなら。



「旦那っ…旦那…!」

「デイダラっ…」


旦那。好きだ。好き。

この恋心に気づいたのは三年も前に遡る。オイラの一方的な片想いだった。ずっと一緒にいればいつかは振り向いてくれると淡い期待を寄せていたが、残念ながら旦那は靡かなかった。
今年でオイラも19になる。小柄ではあるが体つきも男らしくなり、引き締まった肢体は若さに満ち溢れている。自分で言うのもなんだが、悪くない。
オイラの若い肉体。鏡に映る自分の姿を眺めながら思う。−心が傾かないのなら身体で奪うまでだと。
オイラは歪んだ笑みを浮かべた。


旦那を罠に嵌めようと。

旦那を振り向かせたくて。オイラの虜にするつもりで。




「うあっ!…ああぁ…旦那ぁ…っ」

「っ……良くなってきたか…?」


鈍痛の中にどこか快楽を覚える。ああ。キモチイイ。官能的な波が行ったり来たり…。一番良いトコロを刺激してくれる。旦那も気持ち良くなってくれているんだろうか。そうでなければ意味がない。オイラは旦那に手を伸ばす。

「ん…?」

旦那が彷徨ったままのオイラの手に自分の指を絡ませてきた。いつもよりも余裕の無さそうなその表情に、オイラはホッと胸を撫で下ろす。

もっともっとオイラの罠に嵌まって、脱け出せなくなればいい。

徐々に波の間隔が短くなっていく。頭から背中から腰から、恐ろしいまでの快楽がオイラを襲う。−もう、駄目だ。


「あ…!だっ…!うああーっ!」

「くっ…」


頭が真っ白になった。オイラは辺りに性を撒き散らし、果てる。同時に下腹部に熱いものが注がれた。旦那が与えてくれた、オイラが欲しかった、白く濁った愛。

少なくともオイラには愛の証だと思えた。



罠に嵌めたのはオイラの方だった。
旦那を振り向かせたくて。オイラの虜にするつもりで。




甘い快楽に溺れたのはオイラだった。



















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な ん だ こ れ は 。

すみませんでした。
デイ視点って書きやすい。
しかしデイが女っぽすぎたかも知れない。
お粗末さまでした。


2012/10/25



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