この瞬間だけ




オイラはこの季節の夕日が好きだ。



己の消えゆく間際に真っ赤に燃え、ゾッとするほどの美しさで辺りを染め上げる。

残り少ない命を惜しむことなく燃やせば、あっけなく尽きる。

だがその美しい赤は、人の目に焼き付き心を捕えて離さない。



これぞ儚く散りゆく一瞬の美だ。









「デイダラ」


「…またアンタか」


「悪いか?」


「…別に」






なぁ、サソリの旦那。


この芸術的な夕日……誰かさんみたいじゃねぇか?








「毎日毎日飽きないな、お前も」


「…何とでも言えよ、うん」


「明日は雨だぞ」


「そうなのか!?」






それは困る。雨なんかに降られては、この美しい夕焼けを拝むことができない。





「…そいつは残念だな、うん。仕方ねぇから明日はアジトにこもって創作活動に打ち込むとするか」


「ああ、それがいい」


「旦那は?」


「あ?」


「旦那は明日何して過ごすんだ?」


「…さぁな。明日にならないと分からない」



「………旦那」


「…何だ」


「…オイラさ、」


















なんだ。もう行っちまったのか。



まったく、せっかちなアンタらしいな。










燃えるような赤に魅了されていたのも束の間。

気がつけば真っ暗な闇がオイラを包んでいた。











――――――――――――

旦那を失ったデイダラの孤独。



解説しますと、デイダラは旦那を連想させる赤い夕日を見ながら旦那に想いを馳せています。すると、旦那が自分の目の前に現れる。これはデイダラの妄想に過ぎないんですが、旦那が生前のように自分と一緒にいて会話ができるのが、彼のささやかな幸せ。でも夕日が沈むと同時に旦那も消えてしまって、また深い孤独の闇へと落ちていく…

自分と正反対の芸術論を唱えていた人が、自分のそれを具現化したような存在ってなんだか複雑ですよね。


いやしかし始めと締めの文がこれまたセンスなくてすみません…!

私はやっぱりシリアスが好きみたいだ。
プラトニックな芸コンが好き^^


2012/10/06


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