芸術家の孤独



「旦那の一番大切なものって何だい?」

単なる好奇心。強いて言うなら心のどこかに少しばかりの期待があったかもしれない。

「…そんなこと聞いて何になる」
「質問してんのはこっちだぜ、うん」

結局、いつものように「くだらねぇ」と一蹴されて答えは聞けず仕舞いだった。





(寂しいのか…?まさか。そんなの馬鹿げてる)

ずっと教えてもらえなかった旦那の一番大切なもの。その答えにようやく辿り着いた。オイラにとっては残酷な、その答えに。


「これ…サソリの旦那に返してくれ」
「何じゃこれは…サソリの人形かの」
「旦那が先に逝ってからずっと、オイラのお守りだったんだ、うん」

目の前にいる旦那の祖母だという老婆に、以前自作した粘土製の人形を手渡す。彼女はそれを手のひらに乗せてまじまじと眺めた後、「もう要らぬのか?」とでも言いたげにオイラを見た。

「元は旦那にあげたものだったんだけど…」

そうだ。単独任務に出た旦那の帰りを待っている間にオイラはそれを作ったのだった。以後旦那は自室の棚に、それもどうやら貴重な物を並べているらしき段に、これを並べてくれていたのだ。

「……」

旦那の大事なものの中に、オイラと旦那が過ごした10年間も入れてほしかった。オイラという存在を入れてほしかった。オイラの10年と旦那の10年が同じであってほしかった。今満ち足りた表情の旦那の心の中に、オイラは微塵も感じられない。ああ、現実はこんなにも残酷で。勘違いを、大きな勘違いをしていたんだ。家族みたいな存在になれただなんて自惚れていたんだ。何て情けない、何て馬鹿げた。

「…っ…………うっ」
「…ちゃんと渡しておくから、今は思いきり泣けばよい」

(今は思いきり泣けばいい)

前に、旦那に同じことを言われたことがある。孤独に押し潰されそうになり、一人で泣く辛さに堪えきれなくなった時、オイラは旦那の前で泣いた。泣き疲れて眠ってしまうまでずっとそばにいてくれた。

芸術家は孤独なものだ。その孤独や葛藤から得た形容しがたい何かを芸術として昇華させ、魂の飢えを凌ぐのだ。オイラと旦那は同じ芸術家として、芸術観は異なるものの、互いの生き様を理解し、深い部分で繋がっていた。少なくともオイラにはそう思えたのだ。こうしてオイラが旦那を求めていたように、旦那が両親を求めていたのだと、確信させられるまでは。















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途中だったものに少し肉付けしました。全く訳がわかりませんね(笑)
状況説明をすると、デイダラは死後に冥土でサソリの姿を見つけるも、サソリは幸せに満ちた表情で両親と共にあった、という事です。これは穢土転後というよりは最初の別れの後の冥土での出来事といった方がしっくりくるかもです。
拙い文章にお付き合い下さりありがとうございました。

2013/12/01



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