:: 前髪


ある日曜日の午後。
日吉の家に遊びに来ていた聖花がはさみをしゃきしゃきさせながら日吉に迫ってきた。
「若、若、ウザくないかねその前髪は」
「…お前は何時代の人間だ?」
「平成」
「いきなり普通に戻るな」
「…。」
「……。」
「んもぅ若ったらわ・が・ま・ま!」
「キモイと思っていいよな?」
「いいんじゃない。私もそう思うし。で、前髪。ウザくないの?そんな長くて」
日吉の前髪は確かに目に入りそうだった。
「少し…でもお前には切らせないからな」
先手は打った。
「どうして!?彼女といちゃらぶしながら髪を切る。素敵じゃない!」
「とりあえずそんな事しながら髪切ったら危ないって事に気付け」
「まぁ確かに…でもいいじゃん!若も元服しようよ!!」
「は?」
話がつかめない。
元服という言葉はどこから出た。
「何だよそれ…」
「昔の人は15歳位で元服したんだって。元服ってわかるよね。大人になる儀式だよ」
「それは知ってる」
「でね、大人になった証に今まであった前髪を剃りおとすんだって」
「ふーん」
「というわけで前髪貸せ」
「『というわけ』で納得できる内容か今の」
「できるできる。深く考えちゃダメ☆カモン若!」
「嫌だ」
即答。
「なんでそんな即答すんのさ」
「聖花が深く考えるなって言ったろ?」
「過ぎたことは気にしちゃダメ☆」
「お前が言ってることさっきから『揚げ足とってくれ』って言ってるようなもんだぞ」
「うっさいなぁ…いいじゃん前髪ー切りたいー髪切らせろー」
「お前ただ単に髪切って遊びたいだけだろ」
「うん」
聖花はとても清らかな笑顔を見せた。
「絶対嫌だ」
「けちー」
「けちで結構だ」
「つまんないー」
「つまんなくて結構だ」
「けっ」
「悪態つくな」
「いー」
「樺地か?」
そんなやり取りをしてたら話がそれてしまった。
そんな日曜日の午後。

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