:: 王様は猫プレイをご所望です


いつものように口付けを落としながら髪を解いて、腰紐に手をかけた時、シンドバッドの手が止まった。

「王?いかがされました?」
「いや…」

カマルが問いかけると返ってきたのは歯切れの悪い言葉。
何でもない、という返事をする割には腰紐にかけた手をどける。

「今宵は、やめておき「カマル」

今夜はやめて寝ようと言おうとしたのに、シンドバッドによってその言葉はかき消された。

「はい」
「に、」
「に?」

に、とは何だ。なかなかはっきり言わないシンドバッドをカマルは睨む。

「何です?」
「今夜は…にゃーって言ってみないか」
「は?」
「いや、だからにゃーって」
「え?申し訳ありません。もう一度」
「にゃーって言ってくれと…」
「はい?」
「ごめんなさい許してください。ものすごく恥ずかしくなってきた」

その言葉を繰り返すより、にゃーと言ってくれとお願いする様の方が恥ずかしいと思う。
そう言いたいのを飲み込んで、カマルは寝台から起き上がった。

「つまり私に喘ぎ声のかわりに猫の鳴き声を出せと」
「そういうことだ」

猫プレイをしたいと言っている男が寝台に胡座をかいて偉そうに頷く。
実際偉いのだが、カマルは無性に腹が立つ。

「誰か!誰かこちらに!」
「え、ちょ、何急に」

カマルは声を張り上げ、警備兵を呼びつけた。

「王!いかが致しましたか!?」
「すぐに獣を連れて来てくださいませ」
「は?」

カマルの言葉に警備兵が目を丸くする。ついでに、シンドバッドも。

「王が獣姦をご所望です」
「うっそマジで」
「王のが入りそうなのを1匹」
「ちょっ、カマルちゃん、」
「猫科でお願いします」
「ちょっとカマルちゃん黙ろうか!」
「サーベルタイガーとか」
「やめて痛い!」

カマルを黙らせ、警備兵の冷ややかな視線に耐えつつ部屋から退出させた頃にはシンドバッドはだいぶ疲れ果ててしまった。

「お疲れですね」
「誰のせいだ」
「元凶はあなたかと」
「…そうだな」

ため息が止まらない。たかがにゃー、されどにゃー。なぜこんなに疲れなければならないのか。

「また、なぜ猫なんです?」
「男の夢だからだ!……頼むからその目はやめてくれ」
「申し訳ありません。想いが隠しきれませんでした」
「俺はいい加減居たたまれなくなってきた」

シンドバッドはいつの間にかにカマルが吸っていた葉巻を取り上げ一口吸って、またため息。


「あなたのせいですけどね」
「…そうだな」
「男の夢かどうかよくわからないので、ジャーファル様でも呼びますか」
「まさかの3P!?」
「絞殺と刺殺はどちらがよろしいですか」
「まさかの2択!?」
「ちなみにジャーファル様を呼べば両方味わえて一石二鳥です、というわけで…」
「って駄目だろジャーファル君なんか呼んだら!」
「いけませんか」
「俺確実に死ぬ」
「でしょうね」
「それを見越しての提案か!そんなに猫はダメか!?」
「ダメとは言いませんけど、」
「けど?」
「ピスティ様のような方ならわかりますが、身長170超えの女がにゃーなんて言ったらそれこそ居たたまれないですよ」
「可愛いかもしれないじゃないか」
「いつもあなたに抱かれている時の私はそんなに可愛くないですか」
「いや、そんなことは、」
「あなた次第ではにゃーにゃー言うかもわかりませんよ」
「カマル…!」
「と、盛り上げましたがこれは誘っているわけではありません。私は眠いので寝ます」
「このタイミングで寝るか!?」
「くだらない会話してるのが悪いです」
「違うとは言えないな…」
「それではおやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
「あ、王、王、」
「どうした?」
「にゃー」

シンドバッドは固まった。
そしてすぐに冒険を語るかのように目を輝かせる。

「明日は昼寝しておけよ!絶対寝かせないからな!」
「残業になってしまえ」



そんな我が王を

カマルは心の底からうざいと思った


  ▼

[TOP]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -