腐れ縁、なんて言葉がある。俺とアイツを言い表すとすればその言葉が一番しっくりくるんだろう。
その関係に満足してないって訳でもないが、中学から一緒だったのに今更苗字で呼ばれるなどという他人行儀なことは正直言って面白くない。
俺らが入ったのは所謂名門、と呼ばれる高校であって、部活にしてもなんにしても、私情を挟みたくないらしい。

それは良いけど俺の意見は聞かねえのかよ、刺すぞ。

「宮地、今日の練習のことだが…」
「あー悪ィ、俺ちょっと担任に呼び出されてんだわ。終わってからで良いか?」
「大学に関して、か?」
「まーな」

短いやり取りをして教室を後にする。お互い何年も付き合っていれば不思議と分かるもので、相手が退いて欲しいタイミングで退いていく。正直心地好いことは確かだが優しすぎやしないか?



「……だからね宮地くん。君の成績ならあともう少し高いランクのところも目指せるのよ?」

はあ、と乾いた返事をして志望校…受験を決めた大学についてつらつらと理論を並べられる。
そんなこと俺にも分かっててこの学校って決めたんだ。お互いの成績から計算していって、俺と大坪が目指してもおかしくない、ギリギリのライン。

「すみません、でも俺ここ以外考えられないので」

早口でまくし立てて職員室を出た。
少し無理矢理過ぎたか、担任が後ろで何か言っているのが聞こえた。やべえかな、なんて思うところもあったけど俺はアイツと別のところに行くだなんて選択肢はない。

「…我ながら、女々しいとは思うけどな」

志望校一つ聞けずにこんな風にこっそりと理想を描いてるなんて普段の俺からしたら全く結びつかないだろう。
それでもそこまでするほど俺にとって、アイツの存在は大きい。ああそうだ、大坪を教室で長いこと待たせてる、早いところ行ってしまわないと。

「大坪ぉ、待たせたな悪ぃ」
「ああ宮地。こっちこそ毎回声かけてスマン」
「何言ってんだ。チームメイトだし、…一応幼なじみだろ。」

幼なじみ、という言葉を吐き出すのに酷く勇気のようなものが必要だった。
中学のときみたいに一緒に居るわけでも、何でもないのに幼なじみだなんて言葉を使うのは何故か複雑な心境になった。
なんか滅茶苦茶女々しくないか、俺。大坪の方を見てみると意外だ、とでもいうようにきょとんとしていた。

「お前どんな顔してんだよ」
「…いや、宮地に幼なじみと言われるのが久々だろう?
何でかすごく嬉しいと思ってな」
「…ふーん」

なんでそんなに嬉しそうなんだよ、馬鹿か。心なしか練習を説明する声も気合い入ったみたいだし。…そう言う顔、不意打ちなんて卑怯だろ、ひくぞ。

「なーにニヤニヤしてんだよ、泰介クン?」
「なっ…!その呼び方は止めろと言っただろう、…清志」

その後続いた沈黙にどちらからという訳でもなく吹き出した。昔はこんな風な呼び方をしていたのに高校の三年間とはすごいもので、違和感を生じさせてしまうくらい互いの呼び方に慣れきってしまっていた。










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