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眼と乱れ



 情欲を滾らせた、
 快楽に溺れた、
 獣のような、
 欲に濡れた、
 ───眼。


 私ははしたなく声を上げている。聞いているのは青木さんだけという安心感のせいだろう。
 痛みはもうなかった。苦痛は随分と薄れて、青木さんを全身で感じているみたいだ。
 ぐずぐずと熱を帯びた下腹部が溶けてしまいそう。
「っは、……ぁ、あおき、さん」
 青木さんで身体中が一杯になる。頭の中も、何もかも。無我夢中で彼の首に回した腕に力を込める。解けたら距離が開く、それがたまらなく寂しい。
「痛くない、ですか」
 口づけのついでみたいに彼は優しく問うた。その言葉より優しくて甘い口づけ。返事はさせないつもりなのか、何度も何度も深く口づける。合間に漏れる自分の小さな声がひどく恥ずかしい。
 やっと離れた唇が吐息を零す。私の唇をゆっくりとなぞる彼の瞳は、飽くまで優しい。
青木さんは、とても優しいのだ。
「へーき、です」
 鼻先が触れ合った。きっと私の頬には涙の跡がついている。
 痛かったのは初めだけ。
 後は青木さんがそれ以上に優しくしてくれたから平気だ。
 もっと、と。
 苦しい願いが口をついで出る。
「、……名前さん」
 青木さんは少し赤くなった。
 微かに彼は呟く。どうしてそんなこと言っちゃうんですか、と。
「ぁ……、ごめんな、さい、」
 熱に浮かされた私はおかしくなってしまっている。優しい青木さんの声、青木さんの腕、全てが。
 好きだからおかしくなる。
 初めてなのにおかしくなるのは、青木さんの優しい瞳のせいだ。
 は、と青木さんは息をついた。「どうなっても知りませんからね、」と消え入りそうな声を、私は確かに聞いた。

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