その日、僕の部屋には君がいた。ふたりでボードゲームをしていて、君は連戦連敗でケラケラ笑っていた。僕なら悔しくて笑う余裕なんてないのに君は無邪気なものだ。「あーあ、疲れちゃったな」背伸びした瞬間、シャツが捲れて白いお腹が見えて、 「……イデアくん?」 気がつくと僕は君をベッドに押し倒していた。身体が勝手に動いんたんだ、嘘じゃない。「ごめん」僕は謝るけど、身体の方はいうことを聞かない。君の腕を掴んで、ベッドに縫いつけるように馬乗りになる。冷静な頭が「お前にナニができる?」と囁く。わからない、僕はこれからどうしたらいいんだろう。 きっと恋人同士ならキスをして、それ以上のことをするんだ、いまから。 「えっと、」 僕は狼狽えて君をじっと見つめる。誰もいない部屋なのだからなにをしてもバレやしない。無理やりキスすることだってできる。それ以上のことだって。したことはないけれど、なんとなくできる気がした。だけど理性はしっかりしていて、押し倒してしまったことを完全に後悔していた。 ただ悲しいかな、いまの僕にそんな度胸はなかった。 「ご、ごめん」 それなら退けばいいのに、僕はまだ君に跨ったまま。 「……イデアくんなら、いいよ」 思いがけない言葉に腰が抜けそうになる。君は恥じらっているのか、そっぽを向いてごにょごにょと「イデアくんがそういうことしたいなら、ね」と付け加えた。第二ボタンまで開けた首筋が眩しい。僕は、 「そういうことは軽はずみにいうもんじゃないよ」 とかいいながら首筋にキスをした。柔らかくて、甘かった。初めての女の子の感触に僕は戸惑う。君は砂糖菓子かなにかですか? こんなにも蕩けるような舌触りで。 僕は心臓が張り裂けそうなほどドキドキしていた。駄目だ、駄目だ。これ以上のことなんてできっこない。きっと君を傷つけてしまう。 でも、ねえ、君は知っていますか。僕の空想上であれやこれをされていることを。空想のなかでの君はもっと積極的で、僕を受け入れるんだ。 だけど現実は違う。僕も君もどうしたらいいか分からなくて互いの目も見られない。 「ごめん」 と僕は小さい声で謝って君の手を解く。 「ごめん、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかった。僕のこと嫌いにならないで」 勝手なことをしておきながら、僕は懇願する。 君はシャツを直しながら僕を見た。 「覚悟、してたんだけどな」 と照れ笑いする目。 なにもしていないのに、僕たちは一線を超えてしまった気がした。これからもいままで通りの友達でいられるか、分からない。僕は不安で、つい涙を流してしまった。情けないって、それは自分がいちばん分かっている。 君は少し考えて、それから濡れた僕の頬にキスをした。 「お返し」 とはにかむ笑顔は、また僕の身体を勝手に動かした。 君をまたベッドに押し倒して、僕は、 - - - - - - |