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Baby's on Fire!!



 どうやら僕はすっかりおかしくなってしまったみたいだ。
 寝ても覚めてもネトゲをしててもあの子のことばかり。なにをしてもあの子のことばかり。朝昼晩、一日中あの子のことばかり。
 こんなの僕じゃない。僕はもっと、他人に興味のない孤高の存在で、一匹狼で、あと、もう言葉は思いつかないけどとにかくそんな感じなはずだ。誰も寄せ付けない、たったひとりの孤独なオタク、たぶんそんな感じだ。
 それなのにいまではあの子と触れ合いたくて仕方ない。談話室で出会えたときには心臓が跳ね上がるほどビビるくせに、妄想のなかではあんなことやこんなこともしている。まずは「おはよう」「こんにちは」「またね」くらい言えるようになりたいのに。
 どうしてあの子は僕なんかに微笑んでくれたんだろう。
 あの微笑みが忘れられなくて、僕はこんなにおかしくなっている。気味悪がられる僕に優しくしてくれたから? 僕ってそんなにちょろい存在だったのかな? オタクは優しくすると落ちるっていうし、あれは本当だったに違いない。
 とにかく僕はあの子にイカれている。
「兄さん最近よく談話室にいるね」
 オルトにも不審がられるくらい、僕の挙動はおかしくなっている。
 分かってる、変なんだ、僕。
 ゲームなら簡単なのに。ゲームの美少女は向こうから話しかけてきてくれて、そしたら僕の返事は提示される選択肢のなかからいちばんいいものをチョイスすればいいだけ。そうしたら自動的に好感度が上がって、少し苦労するけれどやがてゴールインできる。なのに現実はどうだ? あの子を前にすると声も出ない。
 それなのに、あの子は僕に微笑むんだ。
 こんなに気持ち悪い僕に、優しくするんだ。
 ねえ、君、知っていますか? 僕の空想上の君がどんなことをされているか。僕をおかしくしてしまった君なのだから、それくらい想像できますよね? 挨拶以上のことくらい当然しているし、恋人同士がすることすべて、一通り、されているのですよ。
 なのに、あの子は微笑むんだ。
 その微笑みが、僕をすっかりおかしくしてしまうんだ。
「イデアくん、こんにちは」
 その一言が、どれかだけ重いか、君は知らない。
 君は僕の人生のバグ。いきなり現れて僕を食い尽くしてしまう恐ろしい存在。死者の国の王だって女には苦労させられたという。
 僕がイカれていることを知ったら君は引いてしまうんだろうね。だから今日も「……こんにちは」と小声で返事するだけ。ニヤけているのを気取られないように口元を押さえて返事するだけ。十分不審なのに、君は微笑んでいる。
 その笑顔に、また、僕はおかしくなってしまうんだ。
 君は優しい悪魔、微笑みだけで、僕をイカれさせてしまう悪魔。もしくは狡い天使、もうなんでもいい。君のことばかり考えてしまう僕を、どうにかしてくれ。

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