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虚構に救う道などない


ぎりり、ぎりりと首が締まる。弛緩した舌がだらりとはみ出した。じっとりした空気が、やけに重い。

「っあ、あ、あ、」

言葉にならない言葉が落ちてゆく。ぱたぱたと畳に落ちるのは汗か涙かそれとも涎か。
首に巻かれた帯が擦れて痛い、苦しい。全身から汗が噴き出してくらくらする。酸素不足の頭では殆どなにも考えることができなくて、ただ畳を爪でがりがりと引っかくことで快楽に対抗していた。身を委ねたら、身体がばらばらになってしまう気がしたから。
首をなぞる温い舌、帯の端を掴んで乱暴に引っ張る大きな手、内臓をぐちゃぐちゃにするみたいな熱、挑むような煽るような言葉――見えるものも見えないものも、全てが私を侵していた。

「苦しいか?」

見れば分かることを態とらしく大仰に訊かれる。頷いて苦痛を訴えても、私が気持ちよさにどうしようもなくなっていることも事実。息苦しさが身体を敏感にする。ぞくぞくと悦楽がなかを満たして、はしたなく嬌声を上げることしかできない。

「ん、んっ、あっ、あ、っ!」

全身がびくりと収斂して、甘い衝撃が頭の先から爪先までを駆ける。咽喉が絞められたまま、掠れた高い声が出た。鼻にかかったようなこんな声は、この時しか出せない。
帯が緩められる。乱れた呼吸はなかなか静まらず、繋がったままの身体の奥がきゅうと疼いた。酸素を求めて口を開けば食い荒らす口づけが降ってきてまた息苦しくなる。
歯がぶつかって、舌が絡まって。

「主ばかり善がっていてつまらんな」

腕を捉えられて起こされる。岩融はそのまま畳に身体を沈め、私に上に乗るよう促した。この体勢はあまり好きじゃない。
ゆっくり腰を下ろす。全て飲み込む前に岩融が腰を突き上げるからまた甘い衝撃が走った。

「これ、だめ、」
「いいや、俺はこれがいい」

掴まれた腰に、岩融の長く鋭い爪が突き刺さる。ぎりり、ぎりり。きっと血が滲んでいる。じわりじわりと痛かった。もう片方の手はまた私の首を絞める。爪が柔らかい肉に食い込んで皮膚を破る。帯とは異なる強い力に、引きつれた悲鳴が洩れた。

「っ、やめ、いわと、し、あっ」

そのまま容赦無く侵される。どこもかしこも痛くてたまらない、死んでしまいそう。痛くて苦しくて仕方ないのに、それでも私の身体は歓喜の声を上げる。身体の奥の、甘美な震えが止まらない。
粘膜と粘膜が擦れる音、ふたりの荒い息遣い、外は多分、雨。
岩融が目を細めて歯を剥き出しにする。喉を絞める力が一層強くなった。

「……出すぞ、名前」

低く呻いて、岩融は果てた。
腰に刺さっていた爪が抜かれる。倒れ込みたいのに、少しでも身体を動かすと首に刺さる爪が更に食い込んで痛い。

「ん、ん、」

私は知っている。岩融は私の苦しむ顔が好きなのだ。だから殺すくらいの力で、でも死なないように巧く甚振る。だから私も好きなだけ、たくさん苦しくしてもらうのだ。
逞しい腹筋と胸筋に指を滑らせ、僅かに擽る。ねだりたいのに声が出ないから。
ねえ、もっと。

「欲しがりだな主は」

そうやって苦しく笑えば、再びなかを侵そうと首を擡げる彼を感じた。

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