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Yautja



 髪を掴んで顔を上げさせる。姿見に映るのは頬を涙に濡らした女と、女を膝に乗せたオレ。彼女の唇には血が滲んでいた。
 滑らかな肌のあちこちには痣や切り傷や咬んだ痕が見える。赤黒い痣や青い痣、戯れに剃刀で切った傷、全てオレがつけたものだ。
 そしていま鏡に映る紅潮した肌は支配欲や加虐心を煽るに充分だった。
「も、ダメ……離してキバナ……」
 唇の血を指で拭ってやる。髪は強く掴んだままで、だから彼女は嫌がるように身体を揺らした。その抵抗がとても面白く、ますます痛めつけたくなる。オレの暴力を嫌がる表情は、とても魅力的だから。
 指についた血を、鏡の中の彼女と視線を合わせて舐めとった。
「マズい」
 髪を掴んでいた手を離し、そのままとても細い首に回す。力を入れたら片手でも殺せるだろう。喉の骨が砕けるかもしれない。一瞬だけ不安になったが、構うことはない。彼女は弱々しく抗った。オレの手から逃れようと首を横に振る。殺す筈がないのに。殺したらつまらない。
「い、や……」
 嫌がる声は聴いていて快かった。それは麻薬の如く脳を支配しようとする。
「善がれよ」
 片方の手を横から差し入れ、爪を胸元に突き立ててやった。びく、と彼女の肩は震える。怯えた顔。
「ほら」
 爪を突き立てたまま、緩やかに動かした。引っかき傷というには悲惨な赤い線を皮膚に引く。皮膚を削ぐように、引き裂くように、ゆっくりと。
「いた、っ、いたい……」
 蚯蚓が血を流しながら這ったかのような線が胸元から横腹にかけて引かれる。痣の上にも、さっきつけたキスマークの上にも。
 オレを飲み込んでいる下腹部がびくびくと動く。痛くされて喜ぶなんてコイツも随分変態だ。オレは嬉しくなってしまう。
 首を絞める力を弱めれば、ずるりと軽い身体が滑った。抉るように動けば小さい身体が跳ねる。
「っあ、あ、だめ、っ」
 一度大きく空気を吐き出し、彼女はぐったりとした。果てたか、死んだか。死んだって構わないか。コイツがコイツであることに変わりはないのだから。
 数分間、女を抱きしめたまま空白を味わった。蚯蚓腫れを指で辿りながら、やっぱり血が出る方がいいなと思った。
 首から手を離す。
「誰が寝ていいって言った?」
 沈黙に飽き、背中を思いきり拳で殴った。「起きろよ」目を醒ました女は蒼白い顔で鏡のオレを見る。その瞳に光はなくて、また嬉しくなってしまう。
「死なせねぇからな」
 耳元で囁くと、再び彼女のなかがきゅうと締まった。

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