×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




ペシミスト気取り



 疾走感のある音が鼓膜を駆け抜ける。なにもかも手放したみたいな声があたしを揺らす。ネズの新曲は畏多くもあたしに捧げられたものだった。「お前が死なないように」おまじないがかけられたその曲はこの世の美しさについてオブラートに包まず語っていた。朝の虹、猫の横顔、梅雨の紫陽花、黒い帽子、それから愛しい人の微笑み。恥ずかしくなるくらい真っ直ぐな歌詞にあたしは照れて頭をかく。こんなポエム、柄じゃない、あたしもネズも。「……どうでしたか」と問いかけるネズもやっぱり恥ずかしそうで「ライブで聴きたいな」あたしは死ねない理由をまた増やしてしまう。「お前が死なないように」作られた曲をもう一度再生しながら、この世の美しさについて考えてみる。死にたかったあたしはもういなくて、いまはもう、ただ幸せな女がここにいるだけだった。

- - - - - -