痛みを与えている自覚はある。いくらおれが非力でも身体全体で叩きつける拳は彼女に細い身体を簡単に吹っ飛ばしてしまった。テーブルにもたれかかる彼女は泣いていた。 「どうしてこんなに遅かったんですか」 問いかけに答えず俯く彼女。「4時間も」4時間もおれを独りにして。 「あ、あの」 言い訳するつもりの口なんてない方がいい。顎を狙って殴りつけた。 「無駄口叩かないで下さい」 「ご、ごめんなさ、い。ごめんなさ、」 ああ、まただ。謝罪は繰り返すほどに軽くなってしまうと何度も教えたのに。言い聞かせても意味がないのだから身体に教えるしかないのだ。 「おれだってこんなことしたくないんですよ」 倒れたところを狙って腕を踏みにじる。ブーツで踏みつけられたら痛いでしょうね。分かっててやっています。 「お前がおれを蔑ろにするからいけない」 「痛い……痛いの……」 「ヒトの話、聞いてますか?」 床に這いつくばる彼女は哀れで、頭が悪い。だからまた身体に教えるしかない。 再び拳を振り上げたとき、彼女はまた涙を流していた。「ごめんなさい」だから、 「謝れば済むと思うなよ」 - - - - - - |