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しなやかな腕の祈り



 友人の兄はかわいそうな人だった。
 猫背でこの世を儚んで、その声はこの世を燃やすために歌を吐いていた。愛を知らないかわいそうな人だった。誰かに庇われたことのない、寂しい人だった。
 わたしは無力で、彼を守ったりできないけれど、手を繋ぐことだけはできた。あまり良くない関係だったけれど、指先から温もりを伝えることだけはできた。
 ねえ、ネズさん、世界には愛が溢れているものなの。
 子供みたいに身体を丸めてネズさんは寝ている。わたしの腕に身体を預けて、まるで安心しきった赤子のように。
 こんなふたりだけど、わたしの指先から溢れる愛をすべてあなたに預けてあげる。
 あなたは強い人だからひとりで生きていけると思っているかもしれないけど、言葉を止めても生きていけるよう、わたしが傍にいてあげる。
 傷ついた彼を抱きしめて、わたしも目を瞑った。優しさが涙のように溢れる。こんな気持ちは初めてだった。
 わたしは友人の兄を心から愛するようになっていた。

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