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アンクレット



 本当にいかれちゃうと、変な笑い声が止まらなくなるんだ。へへへって、ふふふって、言葉にできるほど器用じゃないから、笑って吐き出すんだと思う。そんな自分がおかしくて、またあははって笑うの。
 約束なんてしていないふたりだけど、ネズはいつもわたしの隣にいた。週5でわたしの家にいるのは、世間的に見ておかしいと思う。頭がやられちゃってるわたしが心配だとかなんとかいって、傍にいてくれるのだけど。
 いかれてるわたしは、それが当たり前になるのが怖かった。例えば目が見えなくなったとして、ネズがわたしの白杖になるのが怖かった。それなしで生きていけなくなるのが怖かった。
 だけどね、たぶんネズがいなくなったらわたし笑うんだと思う。へへへって、ふふふって。本当におかしくなっちゃう。涙溜めて笑うよ。
 そうやって想像してるだけでも悲しくなってきちゃった。お揃いのチョーカーを弄っては存在の名残に縋り付く。彼が隣にいない日は不安定だ。もう既に、彼はわたしの一部になっているようだった。愛が身体の一部になるのは恐ろしい。
「おれは好きでやってるんです」
 ネズはいつもそう言う。
「お前が好きだし、何も問題ないです」
 彼の愛の言葉は不器用で、だけど尚更それはわたしをグサグサと突き刺した。この愛を失ってしまうと、穴ばかり残ってしまう。いつかなくなるかもしれないものに頼るのは、とてもおかしなことで。
 わたしは笑った。取り止めもなく。ネズはいつもわたしを心配してくれる。あはは、おかしくなっちゃう、そういえば最近、笑顔を見てないなぁ。わたしばっかり笑いの発作。
 本当にいかれちゃったら、ちゃんと面倒みてよね。わたしきっと笑いが止まらなくなるから、猿ぐつわしてもいいし、縛ってもいい。ビスチェを着るよ。精一杯のオシャレさせてね。
 約束のアンクレット、ほしいな。星々みたいにキラキラと輝くアンクレット、土星の輪みたいなアンクレット。きっといつまでもわたしの面倒を見てくれるって約束。ネズがつけてるアクセサリーは無骨だから、できるだけお揃いはしたくない。チョーカーだけは別だけど。
「ずっと側にいます」
 なんて怖い約束をしながら、あなたがアンクレットはめてね。わたしはアンクレットに願いをかけるから。あなたが笑顔でわたしを愛してくれますようにね。


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