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Silly!!!



 世の中には二種類の人間しかいない。ダメ人間か、そうでないかだ。
 オレは漏れなく前者なのでメモに〈重要〉とタグ付けしたミーティングの時間を忘れ、慌ててスケジュール管理をしてくれるスタッフを探し回っていた。廊下をどたどたと走っていたら向こうから小さい人間が同じくらいの速度で走ってくる。ぶつかりそうになったので止まった。すれ違い様に窺うと、顔を真っ赤にしたオレが探していたスタッフだった。声をかけそびれてぽかんとしていたら、その暴走したヌーみたいなスタッフが急ブレーキをかけ、振り向く。
「ダンデさん! ミーティングは四時からです!」
 真っ赤な顔のままそう言ってまた去っていった。助かったが、一体なんなんだ。
 廊下を少し進むとキバナがジュラルドンに抱きついてなにかめそめそと嘆いていた。「おい」なにかあったか、と訊く前にキバナが顔を上げる。頬に平手打ちの痕がくっきり残っていて、唖然として次の言葉がでなくなった。
「ビンタされた」
「だ、誰に」
「さっきオマエと話してたあの子」
「……お前、なにしたんだ?」
 彼女が意味もなく暴力を振るう人間でないことはオレがきちんと知っている。なにをどうしたら張り手なんて食らうのだろう。
「まーたあのスタッフからかってたんですか」
 今度は後ろからネズが現れた。腕を組んでにやにや笑っている。「バレバレですよ、惚れてるの」なんだ、そうだったのか。「やめろ、ダンデは気づいてなかったんだから」馬鹿にしたような言い方に少しむっとする。
「別になにも、っていうかフツーに話してただけ」
「なにもないのにビンタしませんよ」
「ネズの言う通りだ。オレはお前が悪いと思う」
「まだなにしたか言ってねぇだろ!」
 キバナにくっつかれたままのジュラルドンが本当に嫌そうに身体を動かした。なるほど、ジュラルドンの身体で頬を冷やしていたらしい。それは確かに嫌だろう。
「女もオナニーすんの?って訊いたらいきなりビンタだぜ。ビビるよな」
「……はあ」
「あ、いきなりじゃなくてちゃんと話の流れで。話の流れで、女もすんの?って訊いたから。オレさまその辺はわりと空気読める方」
「どう思います?」
「……せめて酒の場で訊くべきだよな」
「オレさまが悪いの!?」
「悪ぃですね、特に頭が」
 キバナがまためそめそし始める。そういえばこいつはパーソナルスペースがバグっているタイプのダメ人間だった。人懐こいといえば聞こえはいいが、要するに距離感の掴めない厄介な人間だ。
 どんな話の流れだとかそもそも好きな女相手だとしてもセクハラだとか色々と文句をつけたかったが、追い討ちをかけるのは気の毒なのでぐっと飲み込んだ。オレはきっと複雑そうな顔つきになっている。真顔なのはネズだけ。
「バカですよね、本当に。そういうときは週に何回?とかどうやって?とかやってる前提で質問すりゃいいんですよ」
 で、ネズもやっぱりダメ人間だったというだけの話で、いまのオレたちには〈バカ〉のタグがついているのだろうなあ、とぼんやり思った。

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