目指すは遥か遠く、チャンピオンの座。 と、その前にカブさんに勝てないんじゃお話にならない。わたしはまだまだひよっこのトレーナー。今日もまたカブさんに負けて地団駄を踏む。やれやれ、とカブさんは首を横に振った。 「だからね、君の戦い方は子供っぽすぎるんだよ」 火力に全振り、素早さなんて気にしない。確かに子供っぽい。だから素早いカブさんにこてんぱんにやられて今日もしくしく泣く。泣くくらいならきちんと戦略を立てればいいんだけど。でもずっとこうやってきたからうまく戦えない。 こうしてカブさんに負けるたびにチャンピオンなんて遠ざかっていく。本当は逃げ出したいけど、カブさんに見守られているからそうもいかない。逃げちゃえ!なんて考えはとっくの昔に捨てた。 「状態異常の使い方もおかしいよ」 まるで学校の先生みたい。真剣にお説教をくれるカブさんはわたしのいちばんの先生。バトルだけじゃなくて、人生も。長い人生でわたしなんか比にならないほどバトルしてきて、勝って、ときには負けて。そんなカブさんを見ていたらわたしが逃げるなんてとんでもない。 本当は成長のない自分にびっくりしている。チャンピオンの戦いはとても熾烈で過酷だと聞く。そんなところに挑戦しようとしている無謀な自分が、好きで、嫌いだ。 「今度はぼくが選んだメンバーで戦ってみようか」 そう言ってわたしの手持ちをまじまじと見るカブさん。 「この子は外したくないんです、あと、この子も――」 「あのねえ、そんなことを言っていると絶対に勝てないよ」 バトルになると結構シビアなところがある。「でもまあ、君が言うならそのままにしておこう」でも甘いところもあるって、ちゃんと知ってる。 ポケモンとカブさん。わたしの視界には見渡す限り、わたしの真実がある。ポケモンと目を合わせるカブさんの横顔はとても端正で、目つきは鋭い。 ああこれが見たくて、味わいたくて、いつまでも彼に甘えているのかもしれない。この視線に射抜かれて、いつまでもここにいたいのかもしれない。負けを恐れるフリをして、いつまでもカブさんに甘えていたいのかもしれない。そう思うと、やっぱりチャンピオンなんて遠いままでいいな、なんて考えてしまうのだった。 - - - - - - |