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Moi-même-Moitié



「ね」
 いつも通りのお遊びみたいなバトルのあと、マリィは隣に座り込んで耳打ちした。
「キス、せん?」
 脈絡のない突然の言葉にスポドリを咽せる。マリィがとん、とんと背中を叩いてくれた。咳き込みながら彼女の顔を見ると、意外にも真顔だった。冗談じゃなかったみたい。
 わたしたちはお付き合いをしていて、それはマリィのお兄さんも公認だ。といってもすることは友達だった頃から変わらない。一緒にショッピングをしたり、バトルをしたり、それから手を繋いだり。
「キス、しよ?」
 今度は上目遣いでこちらを見てくる。反則だ、可愛いに決まってる。分かっててやるんだから。
「わ、わたしまだ心の準備が」
 視線を逸らして心臓のどきどきを押さえ込む。そう、だって、友達みたいなお付き合いだったから、急にそんなこと言われてすぐに対応できるわけがない。
 マリィは、可愛い。少しツンとしたところが可愛い。でもわたしには甘えてくるところも可愛い。こうやって自分の可愛さを武器にわたしに迫ってくるところも、可愛い。
「え、えと、マリィはしたいの?」
 間抜けな質問をする。マリィはちょっとむくれた。「したくなかったらこんなこと言ってない」そうだよね、ごめん。歳上のくせに、わたしはこういうときに頼りにならない。ええと、とか、うーん、とかごまかして服を整えるフリなんかしてみる。
 したくないわけじゃない、むしろしたい。でもなんといえばいいのか、マリィの純粋な部分にわたしが触れてしまっていいのか、そんな気持ちになってしまう。唇は神聖なところだ。そこから愛の言葉は紡がれる。なににも代えがたい、マリィの柔らかそうな唇。
 わたしは見入っていたらしい。痺れを切らしたマリィはわたしのパーカーを掴んでぐいと引き寄せた。
「あ」
 気の抜けた声が出てしまった。ぎゅっと目を閉じる。ふわり、優しい温度が唇に重なった。微かに甘い匂いまでする。
「……しちゃった」
 目を開けると目と鼻の先にマリィの顔があった。真っ赤になっている。たぶんそれはわたしもだ。「……しちゃったね」まだ柔らかさの残る唇に触れる。リップが移っていた。
「もっかい」
 今度はわたしからした。触れるだけの、静かなキス。パズルのピースが合うように、ぴたりと合わさる。いままでしていなかったのが不思議なくらい、それは自然な行為に思えた。まるでわたしたちは元からひとつだったみたいに。欠けていた部分が当てはまるように。
「ぷは、」
 お互い息が苦しくなったところで唇を離す。
「……好き」
 今度はマリィの方が視線を逸らし、そう呟いた。指先はまだわたしの服を掴んでいる。震えているようだった。その小さい手にわたしの手を重ねて
「わたしも」
 と耳打ちした。きゅ、と指先だけ繋ぐ。お互いのどきどきがひとつに混じり合った。

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