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ネガオモタイプ



 大変申し上げにくいのですが、わたしがこうなってしまったのはキバナのせいなのです。少し長くなりますが聴いて下さい。仕事もないしお金もない、やる気もなければ生きてる意味もない。そんなわたしがいまこうしてあなたの目の前にいるのは、キバナがわたしを生かしているからです。初対面でプロポーズされました。その頃のわたしは愛に飢えていたので、すんなりとそれを受け入れました。けれど結局上辺だけの愛、いまでは「顔がいい」の一点だけで彼を好ましく思っています。最初はときめきもありました。笑顔も泣き顔も、抱きしめられることにも。それらをすっかり忘れてしまったわたしは、愛されていても孤独なのです。キバナには正直にこの気持ちを伝えています。彼、「それでもいいから側にいてほしい」なんていうんです。追っかけの子が聞いたら泣きそうな台詞ですよね。わたしの心は歪んでいて、きっとそれはきっとキバナという金型のせいなのです。彼が愛という鎖で雁字搦めにしてくれて助けるという名目で縛り付けているのです。惚気に聴こえるでしょうか。それでも構いません。聴いて下さるのなら。続けますね。キバナはわたしの全身を愛しています。夜、どんなに疲れていてもわたしが寝付くまで見守っているほどです。わたしの顔なんて平凡でつまらないというのに。彼の寝顔なんて久しく見ていません。どんなに愛されているか、あなたならどうやって知りますか? 普通は「わたしのどこがすき?」なんて訊くでしょうか。そんなの思いつかなかったわたしはとても根暗で気味の悪い人間です。まず自分の腕を切りました。それから太腿も切りました。こんな風に訳の分からない行動を取れば幻滅されるだろうと思ったからです。彼は冷静に傷の手当てをしてくれました。思惑は外れたのです。次に、もうお分かりでしょうが、あなたと寝ましたね。ええ、キバナには知られています。そんなに動揺しないで下さい。彼はあなたにもわたしにも怒ってなんかいません。ただ、泣きそうな顔で「オレのどこが悪いのか教えてくれ」といっていました。完全無欠のキバナが、可笑しいですね。わたしはどこも悪くないと応えました。だって本当のことですから。キバナはなにをしてもわたしに幻滅しないのだなと分かりました――実際、幻滅されたら困るのはわたしなのですが。こんなにも重い恋人を、彼はまだ愛しいといいます。だからわたし、もうなにもかも心配するのをやめていまを生きることにしたのです。明日のことなんて明日のわたしが考えればいいと思っています。いまですら、次の瞬間どうなるかなんて考えていません。どういう意味か分かりますか? わたし、さっきキバナをここに呼び出しました。もうあと数分で彼はここに着くでしょう。そんなに慌てないで下さい。どうしてこんなことをするのかって、それはいま以前のわたしに訊いてくださいな。大変申し上げにくいのですが、もう外にキバナの姿が見えます。わたしたちは一体どうなるのでしょう。そんなの、次の瞬間のわたしたちにしか分からないのです。

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