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アマツサエ



 少女たちの恋は甘い砂糖菓子。すぐに溶けてひとつになる。妹の恋人は妹とよく似ていた。彼女は年上のくせにマリィに叱られたり窘められたりする様は子犬のようだった。ふたりはお揃いのアクセサリーをつけて、よく妹の部屋で内緒話をしている。くすくすと漏れ聞こえる笑い声は炭酸が弾けるように儚く、耳に心地よかった。だからなのか、それとも一目惚れだったのか、おれは彼女に恋するようになっていた。少女、あまつさえ妹の恋人に。だから彼女が家に来るたびにこやかに応じた。「お邪魔します」ちっとも邪魔じゃないです、いつまでもいてほしいくらいです。良い兄の顔をして妹の部屋まで紅茶を運んでやるとき、気づかれないよう彼女の姿を目に焼き付ける。短い髪、白いうなじ、柔らかそうな唇。すべてにどきどきして、いてもたってもいられなくなる。けれどおれは決して彼女の恋愛対象にはなり得ない。その事実もまた、おれを駆り立てるのだった。手に入れられないものは美しい。触れたら壊れてしまう銀細工。こっそり咲く鈴蘭。手の届かない雨上がりの虹。マリィは少女であるがゆえにきっと彼女に触れられたのだ。おれは彼女にとって恋人の兄、あまつさえ男。距離の近い他人。それでいい。おれはこのままの関係がいちばん居心地がいい。

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