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王様の耳はロバの耳



 本当のことを喋りたい。あのダンデが夜な夜なわたしの胸で泣いていることを。チャンピオンの重圧に耐えきれず毎晩吐いていることを。もしかしたら誰もが気づいているのかもしれないけれど、気がつかないふりしてる。叫び出したいわたしはまるで異邦人の気分。だって、ね、恋人だもの。彼のいちばん弱い部分を受け止めるのは当たり前のこと。だけど心の箍が外れそうになることがあるの。本当のダンデはすごく弱くてわたしと強い眠剤がないと眠れないってこと、言いたくてたまらなくなる。それはきっと優越感。あなたに選ばれたという意識がそうさせる。
 実はこっそり、親友にだけ心のうちを吐露していることを許してね。大声であなたのことを話してみたいというわたしに、彼女は言う「普通に考えなよ。悧巧になりなよ」そんなこと暴露しても拍手の代わりに礫が投げられるだけ。それでも馬鹿を選びたいわたしも、だいぶ病んでいる。
 今夜もダンデは強いお薬を飲んで不安を落ち着ける。「酷い日だった」とさっき食べたばかりの夕食を全部吐く。わたしは背中をさすりながら歓喜にぞくぞくしてしまう。真実はここにある。わたしにだけ見えている。ああ、本当のことを喋りたい。そして人々の視線に耐えきれなくなったあなたを支えてあげたい。声の限りに語りたい。あなたにもっと依存してほしい。

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