×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




孤独の王



 いつか気づいてもらえると思っていた。ひどく臆病なおれはお前に直接好きだと言えず、この関係を壊したくないくせに発展を望んでいた。お前の方からこの気持ちに気づいてくれると思って、なにもいわなかった。お前はいつでもおれの側にいた。
 お前のために何曲も書いた。そのうちのひとつがヒットして、やがておれをスターダムにのし上げた。熱狂的なファン、私設応援団、テレビショー、満員のライブ、生活は一変した。お前のためを想って作った歌がこんなにも評価された。おれは誇らしい気持ちでいっぱいだった。
 ライブには何度もお前を呼んだ。決まってその曲を演った。お前が聞けばすぐにお前のことを歌っていると分かる歌詞。お前の目を見ながら歌った。遠かったけれど、硝子玉のような瞳は確かにおれを見ていた。気づいてもらえたと思った。それは間違いではなかったけれど。
「もう、いままでのネズとは違うんだね」
 お前は悲しそうに笑って、おれから去っていった。お前のための曲なのに、どうして。お前のためにいまのおれになったのにどうして。また、いまのこの気持ちに気づいてもらわないといけないのですか。どうして。

- - - - - -