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疆界



 わたしの彼が都合つかないとき、ネズの彼女がいないとき、わたしたちはセックスする。
「コーラ買ってきたよ」
「どーも」
 家にあげてもらうお礼に瓶のコーラをネズに渡した。冷えてないけど、飲むのはわたしじゃないからどうでもいい。
「シャワー浴びてくるね」
 アウターを脱ぎかけるとネズに腕を引っ張られた。
「別にいいです」
「わたしがよくない」
「我慢できないんで」
 躾のなってない犬だ。彼女はどんな教育してるんだろう。仕方なくわたしは服を脱ぐ。じっとりと背中には汗をかいていた。
「お前の匂いがする」
「やだな」
「嫌いじゃないですよ」
 ネズはそう言いながらわたしの耳を食む。条件反射的にわたしの下は濡れた。ゆっくりと指が入ってきて、ネズは丁寧にわたしのなかを愛撫する。
「入れていいよ」
 早く気持ち良くなりたいわたしはネズを急かした。恋人にするみたいなことは要らない。
 ずぶりとネズの熱が入ってくる。これが欲しかった。
 なかに入ると彼ももう遠慮なしに動いて自分の好きなようにする。犬がそうするみたいに腰を動かして、はあはあと耳元で荒い息を響かせる。そうなる頃にはわたしもすっかり犬みたいになってしまって、ただ鳴き喘ぐだけ。
 愛してるとか好きだとかそんな言葉、思いつく暇もない。ただ気持ち良くてしてるだけ。薄い隔たりがわたしたちの境目。
 ネズが射精した瞬間、コーラ冷蔵庫に入れ忘れたな、と思いだした。それくらいわたしたちは他人だった。

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