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テクレ



 いつから妹を愛していたかなんて覚えていない。気がつくとそれが当たり前になっていた。そしてそれが異常であることも分かっていた。妹のためにもならないことも。何度もやめようとした。何度も、他に女を作ろうとした。けれど血の繋がりのせいか妹との相性はとてもよく、どうしても離れられなかった。おれたちは植物園に行くこともあれば、盛りのついた猫のように交わることもあった。どちらも、愛だった。
 だから彼女が指輪をつけて帰ってきたとき、雷に打たれたような衝撃が走った。「友達からもらった」なんて誤魔化されたけれど、目を見ればすぐに嘘だと分かる。納得してみせたけれど、そろそろ潮時か、なんて思ったりした。
 妹は社会生活不適合者のおれと違って真っ当な人間だ。おれがいなければ外に恋人を作って当たり前だ。それをしないのはおれが縛っているからに他ならない。
 動揺しながら午後の誘いをすると、彼女はキバナからの電話に出た。そこで全てを察する。確かにあいつは前から彼女を見る目がいつもと違った。そうか、指輪はキバナにもらったものだったのか。彼の名前を出さずおれを断る彼女が不憫に見えて、できるだけにこやかに見送った。
 帰りは珍しく遅かった。玄関先に佇む彼女からは知らない匂いがして、衝動的に抱いた。まるで上書きするみたいに。それは確かに嫉妬だった。それでもできるだけ乱暴に抱いた。――キバナに靡いてほしかったから。
 幾度目かの事後、おれ以外に抱かれたことを謝る彼女を突き放した。謝らなくてもいい、そのまま普通の恋愛をしてほしい。そうはいわなかった。そんなことをいってしまうと、優しい彼女は余計におれから離れなくなるから。
「お前、恋人のつもりでしたか」
 自分から放たれた冷たい言葉にぞっとする。
 おれは、ずっと恋人のつもりでした。でも、それじゃいけないと分かっていたんです。だからお前の目をまともに見られないことを許してください。
 彼女だって薄々分かっていたはずだ。絶対に幸せになれないと。それでもいいというかもしれない。けれどおれは一度愛した人間が不幸になることは耐えられなかった。
 翌日、彼女は早くからキバナの家に逃げ出した。それでよかった。優しくしてもらって、絆されて下さい。キバナはそういうのが上手いから、おれ以外に男性経験のないお前なら上手にすきになれるはず。妹は数日間帰ってこなかった。寂しくて胸が痛んだけれど、最善策だった。
 しばらくして、彼女はトランクひとつでうちを出て行った。置き手紙もせず。マリィにもなにもいわず。
 おれたちの思い出の品は丸ごと彼女の部屋だった場所に残されていた。お揃いのアクセサリー、ツーショット、いつかのデートで買ったぬいぐるみ。
 それでいい、それでいいんです。おれのことは、忘れてくれ。きちんと、普通の恋愛をしてくれ。おれのことを憎んでもいいから、幸せになってくれ。不器用でお前を突き放すしかできなかったおれを、いつか許してくれ。

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