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真珠の唄



 最初はただの好奇心だった。いつも優しく、下手くそに笑うネズさんがどんな風な顔をするのか知りたくて、軽率に男の誘いに乗った。愛を伴わないセックスも気持ちいいことを知ってしまった。ネズさんはわたしをあまり抱かなかったから、身体の火照った日は男を探して寝るようになった。わたしから彼を誘うのは、淫乱のようでとても恥ずかしかったのだ。だから誘ってくれる男に簡単に跨った。夜毎帰りが遅くなるわたしを、彼は心配こそしてくれたが疑いはしなかった。なんだ、浮気って簡単なんだ。味をしめたわたしは彼の友人とも寝た。さすがにそれはすぐに彼の知るところとなった。ネズさんは「お前、やるならもう少しうまくやりなさい」と優しく、下手くそに笑った。彼はわたしを許したのだ。「そんなことより、お前を失うのが怖い」と、「どうかおれを捨てないで」と泣いて縋りさえもした。このうえない快感に掻き立てられ、わたしは「そんなことしないですよ」と何故か彼を諭すように微笑んだ。その癖、次の日も彼の友人と寝た。ネズさんはまた泣いて、でもわたしを許した。彼の愛は歪だった。丸く、形のいい愛を持ち合わせていなかった。わたしも歪んでいたので、この愛は成立してしまった。そしてわたしはまた彼の友人と寝る。彼はわたしを許す。「お前、おれをきっと見捨てないでください」だんだん彼の取り乱す姿を見ることが目的になっていた。「大丈夫ですよ」と聖母のように微笑めば、彼は安心して泣き止んだ。まったく、わたしたちは歪な愛を完成させてしまった。

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