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陋劣の愛



 その酷く甘やかな唇でオレを罵って。
 その白魚の様な指先でオレを虐めて。
 その輝く宝石の瞳でオレを見下して。

 君は冷たい爪先でいとも簡単にオレを服従させてしまう。オレはフローリングに額を押し当てて君の指示を待っている。後頭部に押し付けられた爪先の圧が気持ちいい。は、は、と息を荒げていると力が込められて、額がごりごりと床を擦る。
「なんで興奮してるの?」
 からかうように君はいう。
「踏まれて、気持ちいいの?」
 けらけらと笑い声が頭上でこだまする。
 気持ち、いい。たまらなく快い。見下されることが心地良くて仕方ない。
「っは、はぁ」
 抑えきれない声が洩れる。四つん這いで頭を踏まれて、側から見ればこのうえなく情けない格好に違いない。
 踏まれているだけなのに、なにもされていないのに、下腹部が熱くなっていた。なんて卑しいオレ、低劣なオレ、汚らわしいオレ。君に気取られないよう腰を引くと、察した君はまた笑い声を上げた。
「どうしたの? ダンデ、そんな格好して」
 ほら、立ってよと悪魔の囁き。
「そ、んな」
 立てば浅ましいオレが一層露わになってしまう。けれども君の言葉でさらに興奮が増して、隠しきれないほどの熱が迸った。
「はやく」
 機嫌を損ねないよう膝立ちになると、君はゴミでも見るような目つきでそれを見た。「気持ち悪い」望んでいた言葉をくれる君は、まるで天使。
 
 さあ早く、オレをもっと罵って、虐めて、見下して。君だけのオレにして。

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