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はじけてきえる



 目を離すとあなたはすぐにいなくなってしまう。気を抜くと手の届かないところに行ってしまう。お互い約束した明日なんてない。そんなあたしたちはコンビニでいつも同じものを買った。強めの炭酸水。甘いでも苦いでもない不思議な感覚が楽しくて、ネズに教えられてからよく飲むようになった。お揃いの指輪とか洒落たものは着けないけれど、炭酸水を飲むと自動的にネズを思い出すようになって、もうずいぶん経つ。甘いでも苦いでもない、そんな味は、あたしたちふたりの仲と似たようなものだった。だからすきなのかもしれない。どっちかつかずの、はっきりしないふたり。お互い恋人同士であることはなんとなく分かっていても、それをはっきり口にしたことはない。でも恋人同士ですることは全部、した。それがよくなかったのかもしれないけど、もうそんなこと言われたって遅いのだ。
「結婚してくれ」
 あたしにそう言ったのはネズではなかった。お付き合いもしていない彼がある日突然プロポーズしてきたので驚いてなにも言えなかったのを覚えている。間違いなくあたしに言っているのかも確かめるためにきょろきょろした記憶もある。そういえばやけにお洒落しているな、とか、高いディナーを奢ってくれるんだな、とかぼんやりしていた。ひとは大抵、そういった分かりやすい行動をとるものだ。はっきりしないネズといる時間が長かったから、あたしもだいぶ鈍くなっていた。あたしは暫く考えて、その申し出を受け入れた。だって彼は悪いひとではなかったし、正しい方法でプロポーズしてくれたのだから真っ当な人間だという確信もあった。彼はあたしの了承を聞いて、涙を流した。やけに人間臭いひとだなと思った。アペタイザーを炭酸水で飲み干して、あたしはため息をつく。この瞬間、あたしとネズの恋は、

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