ネズさんの節くれた指が舌の上を滑って喉の奥に侵入する。 「ほら、吐いて」 彼は行為の前にわたしに嘔吐を要求する。そしてわたしは大好きなネズさんの言うことだから従う。 でも頑張ってもうまく吐けないからネズさんは手伝ってくれる。慣れなくて、いつも泣きながら胃液も何も全部吐いて胃を空っぽにする。喉がひりひりして、ぜえぜえと息があがる。 胃がひくついて、涙が溢れる。無理に吐かされるのはとても苦痛だ。でも、それを強要しているのは世界一愛しいひと。わたしはネズさんの言うことなら何でも聞いてしまう。 口の中が気持ち悪い。このままじゃネズさんが口づけしてくれる時、彼に不快な思いをさせてしまうかもしれない。……ああ、ネズさんがわたしにキスなんてしてくれるはずがないんだ。いつだって期待するけれど、わたしの仄かな期待は叶えられたことがない。だってネズさんはわたしを愛しているわけじゃないから。 だけどわたしはネズさんのもの。ただそれだけ。 胃の中が本当に空になった。吐こうとしてもわたしの嗚咽が漏れるだけ。ネズさんは指で口の端を拭ってくれた。 「よくできました」 そうして今度は彼のものが乱暴に押し込まれる。指とは違った温度が喉の奥を侵し始める。すごく苦しい。悦んでくれるように一生懸命舐めると、ネズさんは眼を細めた。その色っぽい眼が好きで、わたしは頭を動かしてもっともっと彼に気持ちよくなってもらう。 暫くそうやっていると、彼はわたしの後頭部を掴んで「出ますよ」と言った。どくんとネズさんの精液が咥内で弾ける。飲み下して、それが空っぽの胃に滑り落ちるのを感じた。この感覚、好き。わたしの中にネズさんが入ってくる感じ。 彼が欲しくなって、期待を込めた眼で見つめてみる。ネズさんは鼻で笑った。言葉は無い。でも浅ましいわたしを嗤っているのだとよく分かった。 わたしはネズさんの細い身体の上で叫ぶように喘いでいる。幾らわたしが好きなだけ動いても彼は気を遣らない。 びくんと傍目にも分かるくらいにわたしの身体は跳ねた。もう身体に力が入らない。きっとわたしは涙目になっている。先に気を遣ってしまったのが申し訳なくてごめんなさいと謝った。彼はつまらなそうにわたしの腰を掴んで動き始めた。なかをぐずぐずと犯すネズさんのそれがたまらなく気持ちいいから、わたしはまた悲鳴をあげる。 彼が大きく息を吸ったので、わたしは身体に力を入れた。途端になかでネズさんの熱が爆ぜた。暫しその熱さに痴れる。彼はその様子を可笑しそうに見ていた。 「君って変な人ですね」 何と言われても構わないから、もっとわたしの中をネズさんで一杯にして欲しかった。 吐いて吐いて吐いて身体を空っぽにしたらその分だけネズさんで一杯になる。頭の中だけじゃなくて身体も満たされるから。 だから彼がわたしに嘔吐させるのは優しさなのだろうと思った。 - - - - - - |