「この世は全て作り物だから。ネオンも、街も、人混みも、なにもかも。作り物なの。空は青い書割りで、海の果てには壁がある。宇宙はプラネタリウムで、人間はどれも人形。どれも本物の偽物。だけど、ねえ、ネズだけは本物の本物なんだよねえ」 お前は太陽に手をかざして忌々しそうに言う。 「ネズだけが本物の世界で、あたしはなにをしてるんだろう」 おれは黙って散文的な台詞を聴いてあげることにした。また薬を飲み忘れたな。 「寂しくて、哀しくて、なんだかやりきれないよ、ねえ、ネズ、あたしを助けてみてよ」 「大丈夫」 おれはお前の前に立って太陽からお前を隠す。 「寂しいのも悲しいのもやりきれないのも、おれも得意だから」 「死にたいけど、まだ作り物の世界で生きていたいの、おかしいかな」 書割りがプラネタリウムになる前に、星座の名前を教えてあげよう。星座は本物の作り物だから。 本物の本物が教えてあげよう。星座の名前なら、得意中の得意だから。 例えばそうだな、まずはお前の星座から見てみようか。本物の作り話でも聴かせてあげよう。 その前に、薬を飲むこと忘れぬように。 - - - - - - |