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ラブレター



 これは君に送る恋文です。
 あの虹がかかった日に想いを伝えようとして背中を追いかけて、君は不意に振り返って「好きです」と言いましたね。あのときのおれを覚えていますか。随分余裕ぶって「おれもです」と呟くみたいに言いました。本当は叫びたいほど君を恋していたのに。
 言葉を交わす間もなく恋に落ちたこと、君は知らないでしょう。君の瞳を見た瞬間、おれはいままにないほどときめいてしまったのです。キスを躊躇ったのは初めてです。それ以上のことをしたら、君は壊れてしまいそうで。流れ星みたいにキラキラした君の瞳はズルだと思います。言葉で勝負するのがいつものおれなのに、大切な武器をすべて奪い去るほどに眩しいのです。「好きだ」以外になにも言えなくなります。まるで中学生です。
 ステージを降りたおれはただの男です。君の知らない顔も持っています。ネズはネズであり、ネズではありません。
 夜毎、君のしなやかな指が蜘蛛の糸みたいにおれの指に絡みついて、無邪気な表情とはうらはらにおれの劣情を誘って、ああおれはそんなことをしていいのですか、君に。その柔い肢体を抱くのは気が引けるのです。
 ネズはネズであり、ネズではありません。君はどこまでおれを知っていますか。おれがこんなに君を恋していること、知っていますか。
 君は君であり、どこまで行っても君のままです。おれの知らない君はこれから知ればいいでしょう。たくさん見せてください。これからも、躊躇いながら君を抱きます。
 叫びたいほど恋しているので、音に変えて叫びます。今夜の一曲目は君に捧げます。アンコールはありません。MCもありません。一曲目だけ聴いたら帰ってもらっても構いません。ただ、最初の一曲は君に捧げる恋文です。それだけ分かってくれたら、ネズは満足です。

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