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心恋



 叶わないことは始めから分かってた。手は届く。わたしのことを妹のように思ってくれているダンデのことだから。
「またか?」
 そう言って失くしものを探してくれるところも好き。見つかったときの笑顔はもっと好き。「お前はしょうがないやつだな」
 そうやってわしわしとわたしの頭を撫でてくれるところが好き。ヘアセットが乱れてもダンデだから許す。
「顔色が悪いぞ」
 心配そうにわたしの顔を覗きこむ仕草、好き。でも迷惑はかけたくないからわたしは「大丈夫」と答える。
 ダンデはみんなの憧れの的、みんなのお兄さん、みんなのヒーロー、そしてきっと、誰かの恋人。
 怖いから本人に確かめたことはない。失恋がかたちになるのは辛いものだ。それはたぶん「大丈夫」じゃない。
 楽しそうに弟の話をする彼の顔をずっと眺めている。童顔を気にして髭を生やしているところも、とっても好きだなあと思う。
「ホップと仲良くしてくれてありがとうな」
 弟の友人だからよくしてくれる、それだけのことなのに。
 来世では我慢するから、ねぇ、せめて現世でもう少しいい思いさせてくれないかな、神様。

 
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