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ユーロジン



 餌を待つ雛のように口を開けている。眠気を知らないガラスの瞳。
「はい、あーん」
 雛に餌をやるように白い錠剤を差し出す。眠気を誘う魔法のお薬。
 こうしないと眠れない彼女のために毎晩執り行われる儀式、もう何度目だろう。白い錠剤を水なしで飲み込んで彼女はゆっくり瞬きをした。眠れないというのは厄介だが幸いなことだ。二度寝に悩まされることも悪夢にうなされることもない。それに、一緒にいられる時間がそれだけ長くなる。
「ネズはお薬なしで寝られていいね」
 彼女は眠気が羨ましい。
 そんなことないですよと答えておれもベッドに横になる。彼女がゆっくり目を閉じたことを確認して手を握った。
「おやすみなさい」
 ふたり同時にそう言って、おかしくてくすくす笑った。
「ほら、寝ますよ」
 額にキスを落とせば彼女は安心して眠りに拐われる。寝付けるまできちんと傍にいてあげる。おれにできるのはそれくらいだから。

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