「失礼しまぁす」 がちゃりとドアを開ければキバナさんは昼寝の真っ最中。口を大きく開けて幸せそうに夢を見ている。 「キバナさん」 「ん? あ、おはよ、寝てた」 「見たら分かります。今月の露出媒体まとめました。後で目を通しておいてください」 雑誌の山をデスクに置く。インタビュー、グラビア、その他諸々、人気者のキバナさんは大変忙しい。ここまで運んでくるのも大変だった。シャツの下にはうっすら汗をかいている。やだな。着替えたい。 「いつもお疲れ。そこにある水飲んでいいぜ。まだ開けてないから」 キバナさんが指さしたのはペットボトルの水。少し迷ったけどお言葉に甘えることにした。会釈して、蓋を開ける。ペットボトルはどうも苦手だ。精一杯力を入れないと蓋が開かない。きゅ、と音がして僅かに水が溢れた。どこにも溢れなかったことを確認して、口をつける。 「暑いなー」 キバナさんは欠伸をしながらそう言った。 自分でも思ったより喉が乾いていたようで、水を一気飲みしてからわたしも応える。 「そうです、ね」 視界がぐらりと揺れる。 「あれ?」 熱中症かなにかかな? 足がもたついて腰に力が入らなくなる。 「おーい、聞こえてっかー?」 キバナさんが目の前で手を振っている。水が溢れて、フローリングに広がって、それから、あれ? ぼんやりしている。息ができない。背中が柔らかいからソファかベッドにいるんだと思う。誰か運んでくれたんだろうか。 徐々に記憶と視界がクリアになる。五感も取り戻されてきて、真っ先に目に入ったのは、 「ん゛っ……!?」 息ができないのはガムテープかなにかで口を塞がれているせいだった。腕にも乱暴にぐるぐると巻かれている。眼下には大きく開かれたわたしの脚と、そこに顔を埋めるキバナさんの頭。ぴちゃりと下品な音を立てて、彼はわたしのそこを――ああぼんやりする、泥濘に頭を突っ込んだみたい。 「あれ、起きた? はえーな」 「んっ、ん゛んっ、」 「騒がれるとヤだからさ、我慢しろよ」 太腿を掴まれる指に力が入っていてとても痛い。痛くて、痛くて、でも、気持ちいい。じゅるじゅると音をさせながらそこを舐めるキバナさんの顔は見えない。わたしは気持ち悪さと気持ちよさの相反する感覚から身をよじる。腰が勝手に動くのは、ただ快楽のせいじゃない。彼は指で敏感なところを弄りながら、執拗に責めてくる。「んっ、んっ」わたしは恥ずかしい声を抑えられない。 「知らないヒトからもらったモノ、簡単に飲んじゃダメなんだぜ?」 キバナさんは指でそこを苛めつつ、顔を上げてわたしに囁いた。知らないひとではないけれど、いまのキバナさんは知らないひとだった。知らなくて、怖かった。きっといまのわたしは涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をしている。 「貰い物のクスリだったんだけどすげー効き目だな」 だんだん状況が分かってくる。さっきのペットボトル、なにか悪いものが仕込まれていたんだ。未開封だし、キバナさんから貰ったということで油断していた。呼吸が苦しい、頬が痛い。 彼はまた身体をずらして脚の間に顔を埋めた。キバナさんの長い舌がなかに入ってくる。腰が大きく跳ねた。認めたくないけれど、確かにわたしは快楽を得られるようになっていた。気持ちいい、怖い、気持ちいい、おかしくなりそう。敏感な部分を唇で何度も吸われて頭が真っ白になる。怖い、嫌だ、気持ちいい。 わたしの腰が動いているのを確認して、キバナさんわたしを覆うようにのしかかってきた。指が近づいて、勢いよくガムテープを剥がす。 「い゛っ……!」 悲鳴は大きな手に塞がれた。 「最初の声は可愛いのがいいからさ、変な声出すなよ」 わたしは涙目で頷く。まだ薬の効き目は残っているようで、視界はぶれていた。 キバナさんはわたしの口を塞いだまま、下を弄り始める。長くて無骨な指が容赦なくねじ込まれたが、痛みはなかった。それどころか新しい悦にわたしの身体は喜ぶ。彼はニヤリと笑った。 「濡れすぎ」 二本目が差し込まれ、抜き差しされる。お腹を擦るような動きに、声が我慢できなくなって、 「や、あっ、」 驚くほど甘い声が出た。ようやく口を塞いでいた手が離された。わたしの体液でぐちゃぐちゃになっている。それを舐め取りながら、キバナさんは満足そうな顔をした。 「そういう声ならもっと出せ」 キバナさんの指が、声が、熱が。 「っ、やめ、やめてくださ、」 「今更? オマエだって喜んでるのに」 「んぅ、っ」 もうなにもかもめちゃくちゃだった。彼はわたしのシャツを破って下着をずらす。露になった胸に迷いなくむしゃぶりついて唾液まみれにする。舌で転がされる快感に背筋がぞくぞくした。自分でも知らない弱いところを責められるのは不思議な気分だった。 「はは、乳首弱ぇんだ」 つままれ、虐められ、悲鳴が出る。 もう初めほどの怖さはなかった。腕が拘束されたままなのは恐ろしかったけれど、キバナさんのやりたいことがわかったから。大人しくしてさえいれば、きっと怖いことはされない。 「キ、バナさ、あっ」 「キスしていー?」 子供がねだるみたいにキバナさんはそう訊いた。訊いただけで、わたしの返事なんか気にしない。端正な顔が近づいてきて、無理やり唇を奪う。ぬるりと舌が入ってきて、そこかしこを蹂躙した。涎まみれ。くちゅくちゅと恥ずかしい音がする。 「狭いな、オマエ」 ずっと下を弄っているキバナさんはおかしそうにそう言った。水音に混じって、ベルトの外される音。恐怖か、期待か、背筋が粟立つ。 ぐちゃりと体液が混ざる感触があって、キバナさんのそれがわたしのなかに入ろうとしている。 「いた、いたい、いたいです、っあ! やめて」 拳でも入ってくるような痛みにわたしはとうとう泣き声を上げる。遠目に見えた彼のものは見たことないくらい大きくて。 「やだあっ、やだ、やだ!」 腰を掴んでどうにかねじ込もうとするキバナさんが怖くなって悲鳴が止まらない。 「……あームリだわ、半分も入らねえ」 ぽつりと呟いた一言に安心する。放してもらえる、そう思ったから。 「でも、ま、いっか」 ニヤリ、と笑ったその顔にわたしはまた絶望させられるのだけど。 「あ゛っ、やあっ、いたい、いたいです、も、やめてくだ、っ」 1時間以上、入りもしないそれを叩きつけられている。押し広げられる感覚が焼けるように痛くて、何度も抵抗した。 「知らねーよ、顔上げろ」 目の前にはスマホ、後ろからは抉るように挿入されて逃げ場がない。 「ちゃんとカメラに向かって、キバナ様に犯されてるとこ映さないとダメだろ」 「ごめ、ごめんなさ、むりです、や、あ゛っ」 髪を掴まれてガシガシ動かれて、そろそろわたしは限界だった。痛い、苦しい、気持ちよくない。 「ったく、可愛いから目つけてたのにまさか最後までできないなんて、オレほんと可哀想」 わたしは馬鹿みたいに言葉にならない言葉を叫んでいる。 「オレのが入るようになるまで、頑張ろうな」 耳元で囁くキバナさんの声は楽しそうで、この恐怖が今日だけで終わらないことを告げていた。 わたしは絶望のなか、意識を飛ばして逃げ出した。 - - - - - - 全編はこちらから |