とてもうるさいのに歩くのはとろいし、なにも知らないのに無鉄砲ですぐ喧嘩を売りたがる。泣き虫なくせに事急いて同じ場所でつまずく。本当にね、お前はいいところなし、いつでも。 紅茶を淹れればひっくり返す、ギターを教えれば弦が切れる、神様が意地悪をしているんじゃないかと思うほどに不器用。 それにお前は笑うのがとても下手で、にこりとする場面でへにゃりと笑う。そのバランスの悪い笑顔が愛しくて手を引いてあげる。そうでもしないと、お前はこけて怪我をしてしまうから。くしゃくしゃの髪は直してあげる、そうする方がもっと可愛くなるから。真夏に喜ぶ雪玉みたいにすぐダメになるけど、喜ぶ姿は素直で可愛い。溶けていることは教えてあげないと気づかない。へにゃりと笑ってそのまま夏に消えてしまうんだろう。 今日も祭りのなか手を取ってあげないと、夏に紛れてお前は消えてしまうから。へにゃり、笑顔は今日の祭りを喜んでいるのかどうかすらわからない。 「わたし、ネズすきだな。優しいから」 自分の言葉の重みも知らないでそんなことをいって、おれを喜ばせて。 「迷子にならないように手をつないでくれるから」 勘違いに一生懸命になって、場違いでも笑顔でいて、寂しがりで甘えん坊。 本当にね、お前はおれ以外の人間からみると、いいところなし。そう全部お前のこと。手を引かれて、自分がどこに連れて行かれるのかも分かっていない間抜けな人間。そう全部全部、お前のこと。だけどその間抜けな人間をずっと好きなおれはもっと間抜け。 人気のない場所に連れて行って抱きしめるから、なにも考えず抱きしめ返してくれるといい。お前のダメなところも全部抱きしめるから、おれのダメなところも抱きしめてくれるといい。 そうすればふたりきっとバランスが取れるから。 - - - - - - |