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In the Garden



 わたしは温かいココアを淹れてあなたを待っている。疲れ果てたあなたを両手広げて抱きしめるイメージを飲み込んで、窓の外を見る。薔薇を濡らす雨が窓を叩いて、重い雲が太陽を隠している。風の行方は誰も知らない。お手入れの行き届いた庭、わたしだけの。稲光り。わたしはカーテンを閉めた。
 遅くなる、なんて連絡が入ってもわたしはあなたを待つことをやめない。疲れたあなたを癒せるのはわたしだけだと知っているから。
 ただ、ちょっとうたた寝の気分。あなたの温かい胸を思い出して船を漕ぐ。雨の音、雨の匂い。
 わたしは鼻歌を歌う。あなたが好きなあの歌を。薔薇しか聞いていない鼻歌。二小節歌ったところで、重たいドアが開いた。
「オレ様のお帰り」
 全身ずぶ濡れになったあなたはわたしに笑いかける。わたしはイメージ通り、両手を広げてあなたを抱きしめた。濡れたってかまやしない。わたしは庭。あなただけの、手入れの行き届いた庭。どうか癒されて。明日のその次の日も一緒に、雨に打たれよう。

 
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