誰もいない公園でゆらゆら揺れながら、あなたの困惑する顔を想像して腕を切る。本に忍ばせた剃刀の刃はお守りみたいなもので、ゆらゆら揺れるわたしの白いスカートを真っ赤に濡らした。剥き出しの夜、月だけがわたしを見ていた。 あなたが迷子になりながら迎えにきたときだって、特別不思議な感じはしなかった。ただわたしの腕を見て困惑する顔つきがおかしかった。真っ赤なスカートのまま、わたしはあなたの家に帰る。 誰もいない冬の海、ポケットの薬をお菓子みたいに噛み砕いて波にさらわれようとする。いつかあなたと来た海で。白いレースみたいな細波がわたしの脚を絡めとる。このまま剥き出しの海に流れて眠るように死ぬんだ、わたし。ゆらゆら揺れる、寄せては返す。 あなたが必死の思いでたどり着いたとき、わたしは胸まで海に浸かっていた。ゆらゆら揺れる波。服が濡れるのも構わずわたしを抱きとめるあなた、よくここまで来れたねなんて笑う。 ゆらゆら揺れながら、ふたりはあなたの家に帰る。ゆらゆら、生きてるのか死んでるのか分からないわたしを連れて。 - - - - - - |