もしも世界が全部。全部オレの思う通りになったら世界中の人間がオレの思う通りに動く。言うことを聞く。世界中の全てがオレの手の中にある。それって素敵なことだと思うんだ。

そう言うとさもつまらなさそうに彼は、ああそう、とだけ応えた。

「ちょっと、ちゃんと話聞いてた?」

「聞いてたじゃねーか」

「もう少し反応してくれてもいいじゃないか」

だって別に、何か言うほどのことでもねーだろ。なんて。本当にぶっきらぼうな奴だ。まぁ確かに世界を手に入れるなんて夢の話なんだろう。だけどオレたちはそれを侵略という形で手に入れようとしているんだから面白い。ていうか痛い。

「へェ、アンタ嫌なの?」

「何が」

「シンリャクケイカク。」

「そんなわけないでしょ」

だって父さんの望みなんだから。父さんが欲しいものはオレたちも欲しい。父さんが望むならオレたちも望む。オレたちはみんな、父さんが大好きだからね。

「つまんねー奴」

「バーンは嫌なの?」

「んなわけねーだろ」

さぁ、どうだろうね。一瞬曇ったその金色の瞳が何を示しているんだろう。でもそんなことオレは知らない。知る理由もない。オレは父さんのためなら何だって出来る。名前が無いオレにヒロトと名前を与えてくれたこと。園の誰よりも可愛がってくれた。

「グラン」

バーンは静かに口を開いて、真剣な目でこっちを見た。いつもの君に似合わない、そんな真剣な顔。

「もしも世界が手に入ったら、その後お前はどうする?」

世界がオレの手に入ったあと。
そうだな、その頃にはきっとバーンもガゼルもその他大勢もぜんぶ蹴落として、もしかしたら殺しちゃってるかもしれないね。オレ1人だねぇ。

「そしたら、他の星を侵略しに行くよ」

もしかしたら君たちにそっくりの奴らがいるかもね。会いたいな。

「バカじゃね」

「本当にいるかもしれないじゃない」

きっと彼らも君とガゼルに似た2人、いつでも一緒かもね。そう言うとバーンは凄く嫌そうな顔をした。満更でもないくせに。するといつもみたいに、目を細めて「じゃあアンタも入れてやるよ」なんて言った。なんだよそれ。満更でもない。











お題 廃水




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