成人した三人



立て続けに入っていた仕事をやっと終わらせて、日曜日。この日が休みになったことに安心しながらオレは久しぶりに会える喜びに満ち溢れていた。


「よぉ」


入った焼肉店では既に2人はいて、肉を焼き初めていた。ああ、変わってないなぁ。いやでも、晴矢は少しだけ顔つきが大人っぽくなって耳にピアスがついている。髪は未だにチューリップが咲いてるな。風介は何だか凄い大人っぽくなってるけど、相変わらずの無表情と寝癖頭だ。


「久しぶり」

「うわ、お前変わってねーな」

「晴矢に言われたくないよ」


本当に久しぶりだから少しだけ緊張してたけど、あっという間に昔のような雰囲気になってほっとした。やっぱりオレはこの2人といるときが一番安心する。FFIで世界一になってお日さま園に帰ると、まずこの2人に頭を思い切り叩かれて、おかえり、と言われたことを思い出す。そのときは勝手に涙が溢れ出て、大泣きしたっけ。
それから時が経つのは本当に早くて高校を卒業すると同時にお日さま園を卒園して、それぞれの進路へと進んだ。オレは有名な大学に進学して、現在は吉良財閥に勤めている。いつか、オレが父さんに代わって会社を継げるように勉強尽くめの毎日だ。


「そういえば円堂くん、雷門の監督になったんだって」

「マジで?へぇ…あの円堂がねぇ」


晴矢は保育士になるか教師になるかで随分悩んでいたけど、体育系の大学に進んだ。今は体育教師になりたいらしい。今度教育実習なんだ、と言った。
風介は理数系の大学を卒業した後すぐ就職。なんだか凄く難しいIT企業に勤めている。風介は昔からパソコンとかそういうのが得意だったから、今は出世して結構重要な大役を任されているみたいだ。


「円堂は…また雷門でサッカーを広めようとしているんだな」


風介の言葉に、うん、とだけ答える。あの頃オレたちが最も全てを注ぎ込んだサッカー。己の存在意義を賭けて周りの者までも蹴落としながら、たくさんの人を苦しめた。でもそれを円堂くんが率いる雷門に救われて、世界大会でオレも仲間としてサッカーが出来たのは本当に嬉しかった。現在、サッカーは腐敗してしまってあの頃オレたちが心から楽しんだサッカーは何処にもないけれど。


「円堂くんなら、またサッカーを、みんなを救ってくれるよ」


だな、と晴矢が笑った。風介も微笑んだ。そのときはまた、お日さま園のみんなでサッカーしよう。


「ま、久しぶりに会ったっつーことで乾杯でもすっか!」

「晴矢、ビール呑めるようになったの?」

「うるせえな、今日は特別なんだよ」

「そうだな」


にやにやとする2人が少し不気味だ。なんだよ、と2人の視線を辿ると、それはオレの左手の薬指だった。


「…あ」


照れ臭くて、オレも思い切り呑んだ。




オトナになった僕ら
(きっとこれからも、3人で!)




「また会おうね」

「ああ」

結局酔いつぶれてしまった晴矢に肩を貸しながら風介はタクシーに乗り込んだ。またな、と言って。


「うわ、焼き肉くさ」


服に染み付いてしまった匂いに苦笑して、あの2人も相変わらず仲良いなぁ、と思った。さて、早く帰らなきゃ。おかえりと言ってくれる人のいる、あの家に。
















完全妄想\(^o^)/
3TOPが大人になっても一緒にご飯
食べてるとか想像してたぎった




( back )

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -