大学生




「別れよう」

一体これは、何回目の別れようだったかな。




別れようと言ったのは、今回だけじゃない。風介の腕がオレの頭の下にあって、目の前に引き締まった胸があるのでまた未遂に終わってしまった。らしい。オレが別れようと言うと風介は怒る。当然だ、何で別れる理由もなくいきなりそんなこと言われてもなぁ。でも、これが本当に理由になるのか分からないけど、ちゃんと理由はあるのだ。それは簡単、風介のことが好きすぎるから。
風介のことが誰よりも何よりも好きだ。
オレの生きてる理由にもなる。
風介が大好きだ。
それでも、駄目なんだ、きっと。このままではいけない。風介はここで止まっていてはいけない。オレみたいな出来損ないと違って風介は有能で、大学の教授からも期待されている。オレのせいできっと風介のこれからの人生は駄目になってしまう。それがすごく嫌で、それならいっそのこと別れてしまおうかとなるのだが例のごとくいつも失敗に終わってしまうのだ。怒った風介にめちゃくちゃに抱かれて、またずるずると日常に後戻り。

怖かった。
誰かを愛して好きになりすぎて、怖いなんて女々しすぎるだろうけど、それでも、オレは。

「………」

そっと、風介の髪に触れてみた。風介は起きない。梳いていくとさらさらと、心地よい感覚にきゅっと胸が苦しくなる。
いつまで続くのだろう。
いつまで続けてしまうのだろう。
風介と別れたとしても、きっとオレはそのとき泣いてしまう。泣いて泣いて、何も分からなくなるまでみっともなく、引きずるのだろう。だから、別れようと言っても風介が放してくれないのに何処か安心している。狡くて、最悪な奴だ。
だからもう少しだけ。オレが風介ときっぱり別れられる決心がつけられるようになったら。そしたら。




お題 虫喰い




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