オレの右手と貴方の左手。
オレより少し体温の高い貴方の手。
何よりも心地良い、温かい感覚。
昔からずっとこれからもきっと、彼はオレにとってのヒーローであり、親友であり、誰よりも尊敬していて、それでいて、多分好きな人。
「バーン様」
「……ヒートか」
練習後のロッカールーム。ダイヤモンドダストと手を組みチーム・カオスを結成してからガイアや他の連中にはばれないように秘密裏に特訓していた。それぞれライバル同士であるチームを混成させたカオスを率いるのは我がプロミネンスのバーン様。キャプテンといっても、ちゃんとガゼル様と度々話し合い、互いに両チームのキャプテンとして我々に尽くして下さっている。まぁ、衝突することも度々あるみたいだけれども。
「汗をかかれたままだと風邪をひいてしまいますよ」
「ああ…そうだな」
くしゃ、と自身の前髪を掻き上げて深く息を吐き出す姿からは、いつもの堂々としていて強気な風格が感じられない。
―どうしたの晴矢、元気ないよ。
――何かあった?おれに何かできることはある?
いつも太陽のように眩しく輝かしい彼だったから、彼が何か悩んでいたり悲しんでいたりしたときは傍にいたオレが一番に気付いていた。
「何か、お悩みでも」
オレが少しでも力になれればいいのに。太陽のような彼を曇らせる原因を蹴散らせればいいのに。しかしオレには出来なかった。今の彼に、昔の彼の姿を重ねる。だって、晴矢は必ず、こう言うのだ。
「何でもねえよ」
今も昔も、自分のことは後回し。本当は誰かに聞いてもらいたいくせに、1人じゃどうすればいいのか分からないだろうに、1人で抱え込んで、一緒に悩むことさえ赦されない。
「ヒート?」
それでも、今も昔もやっぱり変わらない、オレより少し体温の高いその温かい手にオレの手を重ねて。ちょっぴり繊細なオレのヒーロー。兼、大好きな人。
「何かあったんでしょう?」
君を見守ってて、支えていられる唯一になりたいんだ。