S級犯罪者でも、暑いといえば暑いし寒いなら寒い。
季節は真冬、冷たい風に晒されながら赤雲の模様のついた装束を纏った影が2つ。
「寒いな、うん」
呟いても帰ってくる言葉は無いと分かっているので気にしない。
サソリはもともと無口で喋りたがらない。二人一組のパートナーとしてそのことはもう熟知しているし、 サソリもデイダラの性格はもう分かっている。
サソリは傀儡である。
傀儡であるため感情も感覚も持ち合わせていない。寒さなんて最後に感じたのは何十年前のことだろうか。
そのことは知っている筈なのにデイダラはよく寒いだの、暑いだの言って同意を求めてこようとするのだ。もう慣れてしまったサソリは軽く流すことにしているが。
デイダラは感情が豊かである。
忍としてあるまじきことだがその性格は好戦的、残忍。まるで子供が初雪を見たかのような表情でその幼さの残った顔に血を浴びるのだ。
S級犯罪者“暁”にいる時点で並みの人間でないことを表しているがデイダラはその中でも最年少。無邪気に笑い、無邪気に殺す。
「(そんなこと、もう知っているけれど)」
サソリに感情が無くて、傀儡人形で実年齢とかけ離れた容姿を持っていて冷酷で残忍で実は遠く昔に失った家族と里を想っていることも、デイダラは知っている。
デイダラにその人殺しの両手と己の心臓に繋がる口があることも、それのせいで里から戦いの道具と運命付けられた一族に属していたことも、本当は子供のころから甘えることを知らずに育ってきたことも、サソリは知っている。
「サソリの旦那。雪だぞ」
デイダラが手のひらを上げるとその上にふわりと白い雪が乗り、そしてじわりと溶けていった。
サソリも手のひらを上げるとその上にふわりと同じく乗る雪はそのまま、溶けることもなく、、
「(そんなこと、もう知っているけれど)」
「寒いのか?」
「うん、とても」
「雪は冷たいのか?」
「冷たいさ」
「そうか」
「うん」
ぎゅう。
サソリはデイダラを抱き締めて、デイダラもサソリの首に腕を回した。
「暖かいか?」
サソリは人形だ。
当然に、体温なんて、
持っている筈がない。
そんなこと、ずっと前から、もう知っているけれど。
「うん」
なんだか涙が出てきた。