とんでもない奴だった、と彼は言う。
「お前よりは遥かにマシだったけどな。うん」
「酷いなぁ先輩」
彼は組織の中で一番若くて小柄な癖に、随分と気も短く意地も悪く生意気だ。こんな若者が我が組織に受け入れられており、あんな暴君たちの中に放り込まれていると思うと色んな意味で不安になる。
彼が言う、オレより“遥かにマシだった”と言う男というのは、つい先日木ノ葉との戦いの中でついに死亡したサソリのことである。サソリもまた気が短く、可愛らしい顔をして荒々しい、異常な性格を持ち合わせていたためにこの生意気な子供と組ませるのは不安どころじゃない、無茶だろうと思ったがこれが案外名コンビとなるのだから、やはりペインは徒者ではなかった。
「でも先輩」
サソリは強かった。残酷な強さを持っていた。己を傀儡人形にした彼は痛みは勿論感情さえも失った。それなのにまだ幼い小娘と老いぼれの祖母に敗退したのは、少なからずデイダラと組んでいたからではないだろうか。
「好きだったんでしょ」
デイダラはサソリに懐いた。見る度に言い合いをしていたり殺し合いに発展するんじゃないかと思うくらいの喧嘩をしていたりしたが、デイダラはよくサソリに懐いていたしサソリもデイダラを何だかんだ可愛がっていたようだ。この2人が何処まで進んでいたかは詳しく知らないが大体予想はつく。とにかく、サソリとデイダラは
「良いコンビでしたね」
死んじゃいましたけどね。後輩の立場を演じながら眺める相変わらずスタスタと先を歩く両腕を失った彼の背中は驚くほど小さくて、生意気言うんじゃねぇよ、と言う生意気な彼の声は驚くほど弱々しかった。
お題 矯児