いつもだったら、違った。
勝手に部屋に入ったり、傀儡を弄る旦那の邪魔なんかしたら普通にクナイやら刀やら(勿論毒なんかが塗ってある)が飛んでくる。しかし、どうした。

さっきからサソリの旦那はオイラの腰に巻きついたまま離れようとしない。なんだ、どうしたんだ。いくら話しかけても無視。取りあえず引き剥がそうと身を捩っても動じないし肩を押してもなんか堪えている。なんだよ、びくともしねぇ。俯いたままで顔が見えない。何でそんなに頑張って力入れて抱き付いてるわけ?うん。


「旦那ー」

「……」

「だーんーなー」

「………」


全く、なんて奴だ。
溜め息が出る。
いつもだったら、いつもなら、いつもは、冷静で無感情で短気でおっかない奴なのにときどき不安定になってオイラに縋ってくる。ぐるぐるって、気分が悪くなるんだって。


「…」

「オレは、お前がいないと」

「うん」

「何故か体の中で…ちょうど核の辺りがな、ざわつく」

「うん」

「なんでだろうな」


なんだよ。オイラよりずっと昔に産まれてるくせにそんなのも知らないのかい。オイラよりずっとずっと年上なのに。



安定剤


(アンタにとってもオイラにとっても)







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テーマ「人外ファンタジー」
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