それでもやっぱり恋
「おそ松くん」
「ん?」

 ムードなんてない、気まずい雰囲気の中、私は彼に気持ちを伝えることに決めた。だって、この機会を逃したらもう話してもらえないような気がしたから。

「私ね、おそ松くんが好きだよ」
「え、は、は!??!」
「なんでそんなに驚くの?」
「おま、俺を好きとか馬鹿言うなよ!いや、嬉しいよ!めちゃめちゃ嬉しいけどさ、でも!名前、自分がどんな目にあったかわかってんの!?」
「え?」

 どんな目にあったか、ってセクハラに近い交換条件のこと?と聞き返せば「違ぇよ馬鹿!」って言われた。馬鹿じゃないよ、そんなに怒らなくてもいいじゃん!

「俺のせいでそんな体ボロボロになってんだよ!?わかってる!?俺を好きになるのは危険なの!名前だとなおさらダメ!」
「あれはおそ松くんのせいじゃないよ!私のストーカーのせいでしょ!なんでおそ松くんがそこまで怒るの!?」
「ああ、もうっ!」

 俺も名前が好きだよ!
 そう彼は言った。

「でも、俺といるとお前まで危険に晒されるの!わかる!?」
「……え?」

 ご、ごめん。好きだよ、の後から聞いてなかった!と言うと「は?……ほんと、お前さあ……」なんて深々と溜息をつくおそ松くん。だって、嬉しいんだもん。

「俺のせいで名前を傷つけたくないんだよ……わかれよ……」

 とおそ松くんは言うけど、全然わかってない。「怖い目にあっても私は平気。だって、おそ松くんが飛んで助けにきてくれるでしょ?」と言い返せば目を見開いて、再び深々と溜息をついた。

「……そりゃ、助けるけど」
「それに、おそ松くんって強いんでしょ」
「な、なんで?」
「だって私を助けにきたのに全然怪我がない」

 月曜日、トド松くんを見てビックリした。怪我をしていないか心配だったのに傷ひとつなくて。ああ、喧嘩慣れしてるのかな。と、そう思った。

「そうだよ!俺ら六つ子はヤンチャなの!お前も危険だよ!」
「かっこいいよ?」
「あー、もう!!!」

 ぐでん、と机に突っ伏せるおそ松くん。どうしたの、なんて声をかければ「名前が可愛すぎて死にそー」なんて棒読みで言う。そんなものにも照れてしまう私はいったいどうすればよいのかわからなかったけど、「ねえ、おそ松くん」と声をかける。

「ん」
「私のボディーガードじゃなくて、恋人になってよ」
「……いいよ」
「!……本当に!?」
「男が好きでもない女を守ると思う?」
「……おそ松くんならあり得そう」
「おい、俺のイメージ」
「だって初対面に近い私にあんなこと要求するなんて」
「あー、あれはだって!好きだから!」
「私じゃなくてもよかったんでしょ?」

 あ、私今可愛くない。刺のある言葉を彼に向ければ「ぷっ」と笑って「可愛いなあ」なんて言うものだから居たたまれなくなって顔を背けた。

「名前」
「……」
「こっち向いてよ」
「やだ」
「なんで?」
「おそ松くん、好きだけど嫌い」
「どっちだよ!」
「……好き」
「俺、今キスしたいなー」
「え」

 キスなんて単語が出てくるものだから驚いておそ松くんを見た瞬間に「にやり」と笑った彼を見て「しまった」と感じる。既に彼の腕の中におさめられた私は、彼のキスを受け入れるほかないのである。



「今度さ、俺の家おいでよ」
「え、おそ松くんの家?」
「そ、弟たちも紹介したいし、それに」

 エロいこと、しようぜ。なんて言う彼を私はぽかっと叩いて「馬鹿じゃないの!」と投げつける。でも、六つ子のみんなは気になるし、それに、その、えっちなことも嫌ではないから誘われたら行けるようにしておこう。……言ったら調子に乗るから絶対に言わないけどね。

愛情、相性、そう
(私が彼のお家に行くのはまた別のお話)


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