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それは反則です! -2-

 夕食を終え、入浴も済ませ、あとは寝るだけというこの時間。私はこの時間が一番好きです。理由は簡単、私の可愛い恋人と戯れられるからですよ。わずらわしいことを全て頭の片隅に追いやって恋人のことだけを考え、まったりと過ごす時間は何物にも変えがたい宝物なのです。私はこの時間で日々のストレスを解消し、つやつやのお肌を保っていると言っても過言ではありません。
 ――なのに。

「これはまずいです」
「どうしたのトキヤ」
「口に出ていましたか」
「うん。えっ、ていうか出してないつもりだったの」
「ええ、1ミリも」
「そっかー」

 今日の私はまったりどころか全然全く1ミリもリラックスできていません。原因はあなたですよ音也。どうしたのトキヤ、ではありません。
 ベッドに座って壁に背を預けた私の足の間にぽすんと座る――ここまではいいのです。けれど彼の姿勢は5分ともちませんでした。ずるずるとお尻が前にずれていき、乾かしたてでいいにおいのする頭がさがっていって、今やその位置は私の股間直撃です。音也がもぞもぞと頭を動かす度にちょっとずつ股間が熱くなってしまっている気がするのですが、彼は気付かないものなのでしょうか…。いや、気付かれても恥ずかしですから気付かないでいてくれたほうがいいのかもしれません。どっちにしろ、もう半勃ちくらいで済まされない感じなのですが。
 とりあえず気持ちを落ち着けて深呼吸、今日の音也のお世話ポイントである爪の手入れをさくっと終わらせてしまいましょう。

「ね、でも出てたよ? 俺きいちゃった。ねぇねぇトキヤ、まずいって何が? 教えてほしいにゃ」

 お 音也ぁぁぁあなたその口癖わざとしょう!?!?そうとしか思えません可愛いあざといぃぃ…。私が他のこと考えて意識を逸らしている努力はあなたの『にゃ』ひとつで水の泡になるんですよ。自分の可愛さちょっとは自覚してくれませんかね??ていうか普段かっこいいくせに『にゃ』とかずるいんですよチートすぎますよわかってます????

「な、なんでもありません。ほら、爪、もうちょっとで終わりますからじっとしててください」
「えー」
「それより明日のお手入れポイントはどこにしましょうか?」
「明日もやってくれんの? やったー! おれ耳かきがいい、膝枕してよ」
「膝枕なら、今だってしているようなものでしょう? ほら、動かないでください」
「んー…だって……」

 だって、何ですか。ああもう本当言った傍から動かないでくださいお願いします百歩譲って『にゃ』って言っていいですから。お願いしますあっそこだめですってば落ち着きなさい音也!!

「トキヤのちんこ、すごい勃ってるし。なんだか頭の位置安定しなくてさ。落ち着かなくてゴメンな?」

 へへっ、と明るくそう言ってのける音也の笑顔にさぁっと血の気が引きました。でもアレですね、頭から血の気が引いても、勃起はおさまらないのですね……。勉強になりました…。

「だ…誰のせいだと」
「うん、俺のせいでしょ? だから責任とってヌいてあげるよ」
「はぁ!?」
「ほーら、じっとしてトキヤ。あーん」

 じっとして、って、それ私のセリフです!さっきから散々言ってたのにあなた聞かなかったじゃないですか!それでじっとしてろなんてそんな虫のいいこと…聞くはずな…く…ないです…。

「ん、今日も元気だね、トキヤ」
「あなたが、舐めるから…っ、です!」
「舐める前からおっきくしてたくせに」
「それはあなたがにゃあとか言うからでしょう! 可愛いんですよ!」

 音也はころんと寝返りをうちうつぶせになると、私のパジャマに手を滑り込ませて器用に性器を取り出しました。正確に言うと、ちょっとだけ脱がされやすいように腰を浮かせてしまったような気もするのですが無意識なので不可抗力ですだって音也がやりたいようにさせてあげるのが彼氏というものでしょう?異論は認めません。

「にゃあっていうのがいーの? トキヤってそーいうプレイすきだったんだ」
「なっ!? 違います違いま、あ、」
「いーよ。お前がそーいうのスキならいくらだって言ってあげる」

 私が必死で頭の中でこの状況に対する言い訳を色々並べているのなんて知る由もない音也は、陰茎に手を添えてぺろぺろとおいしそうに舐めてくれていました。ちゅ、と亀頭にキスをされると、びくっと腰が反応してしまいます。上目遣いで目を合わせたまま先走りを舐めとられた瞬間、いつのまにかたまってしまっていた唾液をごくりと飲み込んでしまいました。この音が彼にも聞こえていたらどうしましょう、恥ずかしくてしんでしまいそう。

「ねぇトキヤ、」
「は……い、何ですか、音也」
「『このおっきいの、俺の中に挿れてほしいにゃあ』」


 唾液を飲み込む音が音也に聞こえる……なんて、ものすごく些細なことでしたね。音也の言葉ひとつで射精してしまうことに比べれば。
 ああもう本当に、ほんっとうに、この恋人には敵わない。
 いつだってこのひとは、私の予想を遥かに超える言動で私のこころを鷲掴みにして離してくれないのです。



「わ……っ、ぷ、」
「ご、ごめんなさい音也!」
「いーよいーよ、大丈夫」

 けれど私はこの直後に、もっと恥ずかしい思いをすることになるのです。なにしろ、突然の射精に反応しきれず白濁でべっとりと汚れてしまった音也の顔に、私の性器はものの数十秒で堅さを取り戻してしまったのですから。

「――あはは、トキヤ絶倫だねっ」
「うるさいです……。もう、責任取ってもらいますからね」

 そう、こうなった責任はとっていただきましょう。とりあえず精液まみれでもなお明るく笑ってみせる恋人を組み敷いて、その顔をタオルで拭いてあげたら改めてセックス再開です。

「やられてばかりでは彼氏としての格好がつきませんから、覚悟してくださいね」
「勿論! 期待してるよ、トキヤ」

ベッドに組み敷かれても彼氏面な恋人にため息をひとつ。もう本当に、覚悟してくださいね。にゃあにゃあ啼いても許してあげませんから。





end

改定履歴*
20120708 新規作成
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