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それは反則です! -1-

 別に、あなたが誰と仲良くなろうといいんです。例えそれが私の兄であっても構いません。あなたと彼を引き合わせたのは私ですし(婚約前の家族紹介のつもりでした)、恋人だからといってあなたの交友関係にまで口を出す気はありませんから。

 ただ――できればその口調だけは、やめていただけませんか?



****
 私の恋人がHAYATOとはじめましての挨拶をしてから今日までの一ヶ月間、彼らが暇さえあれば電話やメールで連絡を取り合っているのは知っていました。明るく人懐こい彼らが仲良くなるのは想定の範囲内でしたし、私としても恋人と兄が仲良くしてくれるのは嬉しいです。どちらも私にとって大切な人ですし、そう遠くない未来には義理の兄弟になるわけですし?あ、もちろん音也と私が結婚する前提ですはい。
 それはいいとして、私にも想定できなかった問題がただひとつだけあったのです。それは音也に、HAYATOの口癖がうつってしまったこと。

「おいしかったー! おなかいっぱいだにゃっ!」

 そう、今このセリフを口にしたのは音也なのです。ふにゃふにゃと緩んだ顔のHAYATOではなく、いつもはきりっとかっこいい私の音也がちょっとだけ表情を緩ませておなかいっぱいだにゃっ!って言うんです。ギャップ萌え半端ないです。ついつい緩んでしまいそうになる頬を、全力で通常通りに保ちます。大丈夫大丈夫私ならできます大丈夫。そう自分に言い聞かせてなんとか乗り切る日々です。私の彼氏(ただしベッドでは受け)が天使すぎて辛い。あ、いやいや彼氏は私でした。誰がなんと言おうと私が攻めです左側です。

「ごちそうさま、でしょう」
「ごちそうさまトキヤv」
「――はいはい…」
「トキヤ、ハイは一回だろー?」

 私のそんな努力も知らずにじっと顔を覗き込んでくるこの天使。全くこの子は私の理性を全力でへし折ることを日々の目標にでもしているのでしょうかと疑わずにいられませんあああ可愛いぃぃぃぃ!
 これを素直に口に出せたらどんなに楽でしょうか…。でも駄目なのです。駄目なんですよ!攻めは…いえ、彼氏は私なのですから私はかっこよくいなければいけません。音也にメロメロになるわけにはいかないのです!

「それよりも! またうつっていましたよ」
「えっ、あ……。へへ、ごめんねトキヤ」

 テヘペロ、と擬音が聞こえたような気がします。あざとい。あざとい!!!そのウインクしながら舌をぺろっと出す仕草はやめなさいキスしたくなるじゃないですか!

「……? トキヤ? 怒った?」

 怒ってません怒ってませんあなたが可愛すぎて直視できず言葉も発せないだけです。覗き込むのやめてください。っていうか子供をあやすようになでなでするのやめてください!!「とーきーや?」じゃないです!声が甘ったるいです!もうわかったわかりましたから、ごめんなさい降参です。だからちょっとだけあなたに甘えること、許してくださいね。

「怒ったというか、……その、」
「んー、拗ねちゃったかな? 拗ねちゃったトキヤもかわいーけど、せっかくなら仲良くしたいかな。どーしたらご機嫌直してくれますか?」
「あなたが、キスしてくれたら直ります」

 私がそれを口にした瞬間、それまでトキヤトキヤとうるさかった恋人はぴたりと動きを止めました。きょとんと私を見る大きな瞳が、緩く開いたままの唇が、とてもとてもかわいらしい。でもそれは一瞬なんです。可愛い大きな瞳がすっと細められた途端に可愛い仔犬のような雰囲気は影を潜め、代わりに狼になるんです。

「――ははっ、オッケーわかった。一回でいーの?」
「何回で直るか、試してみてください」
「そうだねっ! はいじゃあこっち向いて目ぇ瞑って」

 「大好き、イイコ、ちゅーが終わったらご機嫌なおしてね」くちびるが触れそうな距離で告げられた言葉は、ふわりとあまい響きをしていました。とんだイケメンです。彼氏面やめてくださいと思うものの、両頬に音也のあたたかくてすこしかさついた手が添えられたままのキスを中断させてまでそれを言葉にする気なんてさらさらありません。だって、すごくすごくきもちいいんですよ。男のくちびるがこんなにやわらかくてきもちいいんだなんて、当たり前ですが音也と付き合ってはじめて知りました。

「ん、ご機嫌、なおった、かな? ねぇトキヤ、まだだよね」

 息継ぎの合間にゆっくり紡がれる確信犯めいた言葉に返事をしようとしても、そんな暇ないくらいにすぐまたくちびるを塞がれます。ねぇ音也、私の機嫌なんて、一回目のキスでとっくに直っていることに気付いているのでしょう?けれどキスが止められないあなたも、結局それを心地よく受け入れている私も、お互い馬鹿ですね。しあわせです。
 私は、このキスが終わったら音也の手に私愛用のハンドクリームを塗ってついでに爪も整えてあげましょう…と思いながら彼のあたたかい舌を受け入れるのでした。






改定履歴*
20120708 新規作成
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