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恋がしたい。 -4-

「わぁっ音也くん! ほんとに来てくれたんだね〜! うれしいにゃあっ」
「へへ、来ちゃった。HAYATO疲れてるのにごめんね、今日会えないって思ってたから嬉しくて…」
「ううん! ボクも会えないの寂しいって思ってたよ。だからすごくすっごく、嬉しい」

 届いたメールからわかっていたとはいえ、マンションで音也を待っていたのはやはりトキヤではなく『HAYATO』だった。口調や仕草がHAYATOでも、それでも音也にとっては会いたくて仕方なかった恋人だ。嬉しそうに自分を出迎えてくれるだいすきなひとの笑顔に、自然に音也も笑顔になる。
 会いたくて仕方なかったのはHAYATOも同じだったようで、音也を部屋の中へと招き入れ、玄関ドアが閉まるまでの僅かな時間も待てないというように自分を訪ねてきてくれた恋人をぎゅっと抱きしめ頬にキスをした。途端にHAYATOのにおいがふわりと音也を包み、寂しかったこころが落ち着いてゆくのがわかる。

「来てくれてありがとう。大好きだよ」
「……うん」

 けれどそれではだめなのだ。このままHAYATOを受け入れてしまったら何も変わらない。今日こそ、ちゃんと自分の気持ちを伝えてトキヤに好きだと言ってもらおう――音也は先程電車の中で決意したことを思い出し、よし、と心の中に固く誓った。

「音也くん、いいにおいする」
「シャワー浴びてきたから。HAYATOもいいにおいだね」
「うんっ、ボクもシャワー浴びたてだにゃあ!」
「髪、濡れてる」
「え……あ、」

 けれどそれをどのタイミングでどう伝えればいいのだろう。会話の糸口を探しているうちにHAYATOの髪が肩に掛けたタオルにぽたぽたと雫を滴らせていることに気付いた音也は、とりあえずいつも彼がそうしてくれるように手を伸ばして漆黒の艶やかな髪をタオルドライしていった。
 少し身長の高い恋人を見上げながら一生懸命にタオルを動かす音也の表情に、HAYATOの目じりが優しく弧を描く。これでよし、と満足気な音也の後頭部を撫でながら、その頬にありがとうのキスをひとつ。途端に顔を赤らめて俯いてしまう恋人の手をとり指を絡めれば、音也は嬉しそうにその手をきゅっと握り返した。
 
「まだ時間早いけど、明日すごく早起きだから……いつでも眠れるように、ベッドでお話しよっか?」

 耳元で囁かれる確信犯めいた言葉に一瞬どくんと心臓が高鳴ったものの、音也は意を決して頷いた。ゆっくり話せるならば、場所はどこでもいい……そう思ったからだ。
 そうしているうちに、くいと上を向かされて笑顔のHAYATOにキスで唇を塞がれる。息継ぎのために一度唇を離して、もう一度。至近距離で見つめるHAYATOは風呂上りだからメイクもしていないし髪の毛だって洗いたてそのままでセットしていないのに、その表情はキラキラのアイドルそのもので、トキヤと同一人物なのだと知っていても本当なのかわからなくなるくらいだった。



****
 手を繋いだまま連れられてきたHAYATOの寝室で、ベッドに入る直前に音也の視界に入った掛け時計の針はまだ21時を少し過ぎた時間を指していた。
 『いつでも眠れるように』なんて、こんな早い時間からベッドに行くための都合のいい言い訳にすぎない。スプリングのきいたベッドに座ってすぐ、HAYATOは暫く触れ合えなかった時間を取り戻すように音也を抱き寄せキスを重ねた。

「ん、っん、はぁ、……んんっぷは、待って、HAYATO」
「んー? どうしたの?」
「あの、HAYATO、俺、今日ちょっと話したいことが……」
「うん、なぁに?」

 音也が次の言葉を紡げないでいると、HAYATOは待ちきれないというようにキスを再開し始めた。初めは額や頬に落とされていたそれは、すぐにくちびるへのものに変わる。息継ぎの合間に熱に浮かされたようも甘い声を漏らす音也のからだに、HAYATOの大きな手が触れた。はじめは服の上から撫でるようにしていたその手は、程なくして裾から内側に侵入して、そのまま服を捲り上げてしまった。今日は初夏とはいえ少し肌寒い日で、裸だと少し肌寒い。けれど、急に空気に晒された健康的な色の肌が肌寒さを感じるより前に、おおきな手のひらが温めてくれた。
 時折擽るように乳首を掠めるしなやかな指先にいちいち反応してびくんとはねてしまうからだを恥ずかしく感じた音也がその手を止めるように自らの手を重ねると、だーめ、と甘やかすような声で窘められる。

「んー……、音也くんゴメン、お話後ででもいい?」
「え、」
「ボクもう待ちきれなくなっちゃった…」
「あ、待って待って!」
「無理。音也くんが可愛いのがいけないんだよ?」
「HAYATO、」
「はい、お話終了ー。おてて上にあげてよっか」
「え、ぁ、や」
「ほら、ばんざーい」

 促されるまま頭上で手首をひとまとめにされると、なんだか支配されているような錯覚に陥ってしまう。音也の瞳にはいつのまにか涙が浮かび、左手で音也を拘束しているHAYATOの空いている右手の指と舌で両方の乳首に与えられる刺激に腰が揺れた。
 HAYATOは恋人の素直な反応に気をよくしたのか、お気に入りのちいさな乳首をますます攻め立てる。吸い付かれたり舐めあげられたりにはどうにか耐えていた音也も、痛みと快感のぎりぎりの強さで歯を立てられると一際高い声で啼いた。

「ぁ、や、やぁあぁっ!! ひぅ、あぁ!」
「ふふっ、可愛いにゃあ」
「ひぁ、……っぁ、あ、」
「音也くんのここ、もうこんなに濡れちゃったね。ほら、後ろの穴まで垂れてきちゃってる。えっちだにゃあ」
「えっあ、待って、あ、HAYATOっ」

 先程まで延々乳首を苛めていた右手は、慣れた仕草であっという間に音也のボトムのボタンを寛げその性器を取り出してしまった。硬くなったそれの先端からとろとろと零れている先走りは後孔までを濡らしていて、すこし指をあてがうだけでもっと刺激がほしいとひくひく蠢く。
 ひとさし指をくいと曲げるとその孔はおいしそうにそれを飲み込み、上の口からは悲鳴まじりの嬌声が聞こえた。中指とひとさし指で慣らすくちくちという粘着質な水音がそれに混じって、HAYATOの性器も硬さを増してゆく。

「んっ、はぁ、んんっ、は、はやと」

 喘ぎに混じって聴こえる自分の名前の頼りない響きに、もう手を離しても抵抗する力は残っていないだろう――そう判断したHAYATOが音也の両手首を解放してやると、その手は案の定HAYATOの手を押しのけようとはせず、代わりに傍にあった枕をきゅっと握り込むに留まった。きっと声が漏れるのが恥ずかしいのだろう、片手は口を覆ったけれど、そんなのもう意味がないくらいに喘ぎ声を上げてしまっている。

「音也くん、ボクはキミのことが、だいだいだーいすき、だよ」






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20120701 新規作成
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