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XI.グレイ伯爵

春らしい暖かな昼下がり、一日のうちで最も楽しみにしている、午後のティータイム。
待ちかねたこの時間だというのに、シエルのご機嫌は先程から急降下していた。
理由は簡単、執事兼恋人であるセバスチャンの突き刺さるような視線が痛い、から。

――食べづらい。

セバスチャンがいつものように紅茶と手作りのスイーツを持ってきたまではよかったのだ。
ほっと落ち着くアールグレイの香り、そして、昨日より暖かい気候にぴったりのレアチーズケーキ。
先程まで集中していた仕事の疲れを癒してくれるであろうそのおやつを、
ぱくりとひとくち、口に運んだときだった。
その様子を見守っていた執事が、はぁ、と盛大なため息をついたのは。

「――〜〜っ、なんだセバスチャン!言いたいことがあるならはっきり言え!」
「は?」
「は、じゃない。全く何なんだ、ひとが食べているところを見てため息なんて失礼だろうが」
「嗚呼、私としたことが申し訳ありません。
 …ですが、坊ちゃんがお気になさるようなことではありませんよ」
「いいから、言え」
「そうですか?では…」

にこりといつもの執事スマイルを作る恋人に、そういうのいいから、とばかりに再度促してみれば、
セバスチャンはすっと椅子からシエルを立ち上がらせて、そのまま後ろから思い切り抱きしめた。
想像もしていなかったその行動に、シエルの手からぽろりとフォークが床に落ちる。

「な…な、に、何だ」
「いえ、坊ちゃんはいつまで経ってもお子様のようなからだだなと思いまして」
「喧嘩売ってるのか貴様」
「とんでもありません。ただ心配なのです。
 ごはんもおやつもしっかり食べていらっしゃるのに、何故でしょうか…」
「知るかっ!…ひゃぁっ」
「ほら、体重だって仔猫と変わりませんよ。
 けれどそういえばグレイ伯爵もあんなにたくさん食べいても細身でしたし、
 世の中にはそういう種類の人間も居るのですかね。人間っておもしろいですねぇ」

シエルが固まっているのをいいことに、セバスチャンはどうでもいいことを言いながら
そのままシエルをひょいと抱き上げてソファへと移動し向かい合わせに膝の上へと座らせた。
そうしてそのまま、ごく自然にジャケットを脱がしにかかるのだ。
シエルが逃げられないように腰に回した左手で悪戯に背を撫ぜながら。

「先日仕立て屋さんも仰っていたでしょう?サイズが変わらないと」
「ひゃあっ!真昼間っから何処触ってる!」
「それから、ウエストが細くなった、とも仰っていましたっけ。それには心当たりがありますね?」
「…こころ、あたり?」
「毎晩私に組み敷かれて、腰を振っていらっしゃいますから。昨夜だってあんなに一生懸命…」
「!!!!貴様何言って……」
「?嗚呼、申し訳ありません。組み敷かれてばかりではありませんよね。
 坊ちゃんは恥らってあまり好まれませんが、
 騎乗位で頑張ってくださることもありますよね、大丈夫、忘れていませんよ」
「うわぁああやめろ!目を瞑るな思い出すな変態!!」
「大体、あんなにいやらしくて可愛い坊ちゃんのお姿、忘れられる訳がないでしょう?
 そんなの勿体無さ過ぎます。できることならば写真に収めて持ち歩きたいくらいですのに」

うっとりと目を瞑っていくらか興奮気味に情事の詳細を語りだす執事の眉間に、
かちりと冷たい銃口が突きつけられた。
ここのところの執事兼恋人のあまりの卑猥さに耐えかねて、隠し持っていたのだ。
まさか持ち歩きだしたその当日に使うことになるとは思ってもいなかったが。
自分はなんという変態と契約してしまったのかと思うとシエルの胸があつくなる。

「言いたいことはそれだけか」
「坊ちゃん!なんですかそんな危ないもの持ち出して」
「黙れ馬鹿執事」

結局、必死のお願いもむなしくセバスチャンには主人から手厳しいお仕置きが与えられ、
その日から一週間、午後の紅茶の時間にシエルの大好きなパフェを運ぶ執事の姿が見られたのだとか。





改定履歴*
20110310 新規作成
パフェはもちろんご機嫌とりのためのものです。
パフェで機嫌治る坊ちゃんも可愛いけど、パフェ作る執事も可愛いです。
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