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Z.ジョーカー -3-

夜着のちいさなボタンに触れるジョーカーの手つきは慣れたもので、
掛かった時間は数分の筈なのに、シエルにはそれがとてつもなく長く感じられた。
最後のボタンから彼の手が離れる頃には、一仕事終えたような疲労感がシエルを襲う。

「…これでよし」
「あ、ありがとうございましたっ」
「ちょお待て、坊、まだこれがあるやろ」

やっと終わった、やっとこの体勢から解放される、そう思ってほっとしたシエルをよそに、
ジョーカーは細腰をぐっと引き寄せるとすらりと伸びた太腿へぽんと手を置いた。
なるほど、そこにはまだ穿いたままだった靴下と、それを吊るガーターベルトがある。
でも確か、セバスチャンにこれを穿かせられたときは――…

「おお、随分本格的どすなぁ。さすがドールの選んだ衣装」
「わああ待って!せんぱい、待って」
「いいからほら、腰上げて。坊はこんなん、穿いたことはもちろん脱がせたこともないやろ?」
「いやそれはないですけど、本当に、大丈夫ですから…っ!?ひゃあっ」

そう、それは本格的な女性のもので、下着より先に着用するもの。
つまり、それを脱ぐには下着を脱がなければいけないのだ。
そんな所の着替えまで他人に手伝わされるなんてありえないとばかりに
シエルは慌てて腰を浮かし逃げようとしたが、結局はそれを逆手に取られて、
今度は膝の上に横向きに座らせられ、次の瞬間には下着をするりと脱がされてしまった。

「………!!!」
「恥ずかしがることないのに、男同士なんやから」
「そういう…問題じゃ…」
「そんなんじゃシャワーもよう浴びれんよ?」

家族や幼い頃身の回りの世話をしてくれていた使用人を除けば、
執事兼恋人であるセバスチャン以外に触られたことはもちろん見られたことすらなかったソコが、
今、昨日まで名前も知らなかった男の目に晒されている。シエルはその羞恥にぐっと目を瞑った。

もう本当に本当に、早くしてくれ。じっとしてるから――

するりと肌の上を滑るガーターベルトの感覚がむず痒くて、自分の腰に回されている
腕を思わずきゅっと握り締めてしまう。謝ろうと思って自分を抱きかかえている男の顔を見上げても、
目が合った瞬間にかぁっと顔が熱くなるのがわかって、何も言葉が出てこない。

「…そういう表情されると、なんやイタズラ心が刺激されるなぁ」

思わず俯いたシエルの耳に響いた、先程よりも少し低めのジョーカーの声。
細い顎にその手が触れて、くいと上を向かされたと思えば、
次に感じたのは唇へのやわらかな感触、だった。
ちゅ、とかすかな音を立てて離れたかと思うと、目線を合わせて、もう一度。

ジョーカーは、シエルの頭がその現実に追いついていないのをいいことに、
さくらんぼのようにあかく色づいたちいさな唇を食むように深く深く口付けた。






改定履歴*
20110304 新規作成
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