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トップアイドルのひみつ -3-

「あなたたち!! 人の上で何やってるんです!!」


 びりびりと鼓膜が震えるくらい大きな声に、俺は目の前のごちそうを一旦放り出すことを余儀なくされた。両手で耳を覆わずにはいられなかったからだ。トキヤってば、今の今まで寝てたのによくこんなに大きい声出せるなぁ、さすが毎日のボイストレーニングを欠かさないだけはある……じゃなくって。しまった、そういえばHAYATOが枕にしてたのはトキヤのおなかだったね。

「声おっきいよトキヤぁ〜…」
「HAYATO、どいてください重いです。というか、なんでこんなにくっついてるんですか」
「あんっひどいにゃあ! さっきは一緒に寝ていいって言ったのに!」
「寝てもいいと言っただけで、こんなにくっつくなんて聞いていません!」

 さっきの大きな声ですっかり目が覚めてしまったらしいHAYATOのぐずるような声にもトキヤは容赦しない。ぷりぷり怒りながら、自分に圧し掛かっているHAYATOを退かそうと一生懸命だ。

「話を逸らさないでください、そうじゃなくて、あなたたちが付き合ってるのは知ってますし私が口を挟むことではないのですが、私の目の前で……その……あまりくっついたりするのはやめてください」
「えー…あ、トキヤさみしかったのかにゃ? ごめんね、トキヤも一緒にする? ちゅう気持ちいいよ?」
「は……?」
「音也くんはボクのものだけど、だいすきなトキヤだからトクベツ。ね? 音也くん」

 ね、音也くん?と小首を傾げて見せるHAYATOの瞳はいたずらっこみたいに輝いていて、俺は自分の中の悪戯心が首を擡げるのを抑えることができなかった。HAYATOが覆いかぶさっているからいまだに体を起き上がらせられずにいるトキヤの頬に、そっと手を添えて自分の方を向かせてみる。途端にぶわっと赤く染まるところも、すべすべのさわり心地も、俺のHAYATOとおそろいだ。

「うん、トキヤもちゅーしよっか。ほらじっとして」
「な、な……」

 あは、キスひとつでここまで動揺してくれるなんて、トキヤって、童貞なのかな。かわいいな。そういえば、お前とはそんな話したことなかったね。ほら、早く拒否してくれないと本当にキスしちゃうよ?

「……や、やめてくださ」
「やっぱりだめぇっ!!」

 聞こえるか聞こえないかぎりぎりの大きさで俺を拒否するトキヤの声に、それより10倍くらいおっきなHAYATOの声が重なった。見れば、我侭な俺のお姫様はさっきまでのいたずらっこな瞳はどこへやら、綺麗な目に涙を浮かべてこっちを見てる。

「あ……たりまえです、そういうことは冗談でやるものではありません!」
「わーっ! トキヤごめん!!」
「ごめんなさいにゃあっ!」
「――まったく、あなたたちは……っ」

 結局俺たちは、HAYATOの声でいつもの調子を取り戻したトキヤに、節度がどうのとか、場所をわきまえなさいだとか、たっぷりお説教された。ただ、俺たち二人を正座させてお説教するトキヤの姿に、撫でようとすると威嚇して怒る猫が重なって見えて実はあんまり内容を覚えていないだなんて、本人にはとても言えない。






改定履歴*
20120512 新規作成
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